iDeCoのご案内

Private Pension — iDeCoの活用

iDeCoで節税しながら
「自分年金」を積み立てる

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、公的年金に上乗せする自分でつくる年金制度です。掛金は全額が所得控除になり、運用中の利益は非課税、60歳以降に受け取るときも退職所得控除などの優遇がある——「入口・運用中・出口」の3段階すべてで税制メリットがある、国が用意した資産形成の器です。個人事業主はもちろん、社長おひとりの会社の役員でも加入できます。本資料では、掛金と控除の仕組み、まとめ払い、お金が返ってくる仕組みと注意点、そして2026年12月に予定される大幅な限度額引き上げまでを整理します。

OverviewiDeCoとは——3段階の税制優遇

iDeCoは、自分で掛金を出し、自分で選んだ商品(定期預金・保険・投資信託)で運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取る私的年金制度です。国民年金基金連合会が実施し、金融機関(証券会社・銀行など)を窓口に加入します。

最大の特徴は、税制優遇が3段階で用意されていることです。

  • ① 拠出時:掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)。毎年の所得税・住民税が軽くなります。
  • ② 運用中:通常は約20%課税される運用益(利息・分配金・売却益)が非課税で再投資されます。
  • ③ 受取時:一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除の対象になります。

「貯金するより、iDeCo口座で貯める」という発想

同じお金を普通預金に置いても控除はありませんが、iDeCoの口座を通すだけで掛金全額が所得控除になります。投資信託での運用に抵抗がある方は、定期預金などの元本確保型商品を選ぶこともできます。その場合でも所得控除のメリットはまるごと受けられます。

Eligibility加入できる方と会社側の要件

iDeCoは、原則として65歳未満の国民年金の被保険者であれば加入できます。経営者・個人事業主に関係するのは主に次の2つの立場です。

  • 個人事業主・フリーランス:国民年金の第1号被保険者として加入(国民年金保険料を納めていることが前提。免除を受けている月は掛金を出せません)。
  • 会社の役員・従業員:厚生年金に加入している第2号被保険者として加入。

社長一人の会社・家族だけの同族会社でも入れます

法人は社長おひとりでも厚生年金の適用事業所となるため、役員報酬を受けて厚生年金に加入している社長は第2号被保険者としてiDeCoに加入できます。従業員の人数や、同族会社かどうかといった会社の規模・資本関係の要件は一切ありません。夫婦それぞれが厚生年金に加入していれば、それぞれが自分のiDeCoに入れます。

会社側の要件・手続き——ほとんど何もいらない

会社側のチェックポイント

① 会社の企業年金の有無:企業型DC(企業型確定拠出年金)やDB(確定給付企業年金)がない会社の役員・従業員は月23,000円まで。ある会社では月20,000円までかつ企業年金と合算の枠内、など限度額が変わります。零細の同族会社は通常「企業年金なし」に該当します。

② 事業主証明書は不要に:以前は加入時に勤務先が作成する「事業主の証明書」が必要でしたが、2024年12月に廃止されました。現在は本人の手続きだけで加入できます。

③ 掛金の払込方法:本人の口座からの振替(個人払込)なら会社の手続きは不要。給与天引き(事業主払込)を選ぶ場合のみ、会社側の登録・証明と源泉控除の事務が必要です。

④ 会社の負担はゼロ:掛金は本人の負担であり、会社の損金にはなりません。社会保険料の追加負担も発生しません。

なお、企業年金のない従業員300人以下の会社には、会社が従業員のiDeCo掛金に上乗せ拠出できる「iDeCo+(イデコプラス)」という制度もあり、上乗せ分は会社の損金になります。従業員の福利厚生として検討の余地があります。

Deduction掛金と最大控除額

掛金は月額5,000円から1,000円単位で設定でき、上限は公的年金の立場(被保険者種別)によって異なります。

拠出限度額(2026年7月現在)
立場掛金月額の上限年間の最大控除額
個人事業主など(第1号被保険者)68,000円816,000円
会社役員・会社員(企業年金なし)23,000円276,000円
会社役員・会社員(企業型DC・DB等あり)・公務員20,000円240,000円
専業主婦(夫)(第3号被保険者)23,000円276,000円

払った掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から控除されます。個人事業主なら年間最大816,000円、企業年金のない会社の役員なら年間最大276,000円が、まるごと所得から差し引かれます。

※第1号被保険者の68,000円は、国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料との合算での上限です。企業年金がある場合の上限は、事業主掛金等との合算管理により月20,000円より小さくなることがあります。

Dec 2026 Reform2026年12月から限度額が大幅アップ

年金制度改正により、2026年12月分(2027年1月引落し分)から、iDeCoの拠出限度額が大きく引き上げられる予定です。

拠出限度額の引き上げ(予定)
立場現行2026年12月〜
個人事業主など(第1号)月68,000円月75,000円
会社役員・会社員(企業年金なし)月23,000円月62,000円
会社役員・会社員(企業年金あり)月20,000円企業年金と合算で月62,000円

役員・会社員は年27.6万円 → 年74.4万円へ、約2.7倍

とくに大きいのが企業年金のない会社の役員・従業員で、月23,000円 → 月62,000円(年間744,000円)へ拡大します。零細企業の社長にとって、小規模企業共済と並ぶ大型の控除枠になります。あわせて加入可能年齢も70歳未満まで拡大される予定です(一定の要件があります)。

Tax Saving節税効果の目安

掛金全額控除による年間の節税額の目安です(所得税・復興特別所得税・住民税10%で試算)。

年間の節税額の目安(概算)
課税される所得金額役員:掛金月2.3万円個人事業主:掛金月6.8万円
200万円約44,000円約126,000円
400万円約84,000円約236,000円
600万円約84,000円約248,000円
800万円約92,000円約273,000円
1,000万円約121,000円約357,000円

たとえば課税所得600万円の個人事業主が上限の月6.8万円で拠出すると、毎年約25万円の節税。20年続ければ累計約500万円です。さらに運用益非課税の効果が上乗せされ、拠出したお金自体は60歳以降に自分に返ってきます。

※基礎控除等を差し引いた後の課税所得ベースの概算であり、実際の節税額は個々の状況により異なります。

Annual Paymentまとめ払い(年単位拠出)の活用

掛金は毎月払いのほか、あらかじめ届け出ることで年単位拠出(拠出月と金額を年単位で指定するまとめ払い)が選べます。たとえば年1回、12月にまとめて拠出すれば、その年に払った掛金の全額がその年の所得控除になります。資金繰りに合わせて「利益の出た年の12月に厚く」といった使い方ができます。

  • まとめられるのは経過した月の分までです(後払い方式)。小規模企業共済の前納と違い、将来の分の前払いはできません
  • 掛金の納付のたびに国民年金基金連合会の手数料(1回105円)がかかるため、拠出回数を減らすと手数料がわずかに節約できます。
  • 企業型DC・DB等に加入している方(公務員含む)は、2024年12月以降毎月定額拠出のみとなり、年単位拠出は使えません(企業年金のない会社の役員・個人事業主は引き続き利用できます)。

How It Returnsお金が返ってくる仕組み——受け取りは60歳から

積み立てた資産は、掛金と運用損益の合計が個人別の年金資産として管理され、次の給付として返ってきます。

iDeCoの給付の種類
種類受け取れる場合受け取り方
老齢給付金60歳〜75歳の間に自分で請求一時金・年金・併用
障害給付金一定の障害状態になった場合一時金・年金(非課税)
死亡一時金加入者が亡くなった場合に遺族へ一時金

老齢給付金は60歳から75歳までの間の好きなタイミングで受け取りを開始できます。60歳から受け取るには通算の加入者等期間が10年以上必要で、10年に満たない場合は受け取り開始が最大65歳まで繰り下がります(例:8年以上で61歳から、6年以上で62歳から)。60歳以降に初めて加入した場合は、加入から5年経過後に受け取れます。

小規模企業共済との最大の違い——60歳まで引き出せない

iDeCoは年金制度のため、60歳まで原則として引き出し・解約ができません(脱退一時金はごく限られた場合のみ)。途中でやめたくなったら、掛金の拠出を止めて運用だけ続ける(運用指図者になる)ことはできます。この「強制的に老後まで残る」性質は、資金拘束というデメリットであると同時に、確実に老後資金が貯まるメリットでもあります。

運用商品は、元本確保型(定期預金・保険)と投資信託から自分で組み合わせます。運用成績によって将来の受取額は増減しますが、運用益には課税されず全額再投資されるため、複利の効率は課税口座より高くなります。

Tax on Receipt受け取るときの税制優遇と「10年ルール」

受け取り方と税法上の取扱い
受け取り方税法上の取扱い
一時金で受け取る退職所得
年金で受け取る(5〜20年等の分割)公的年金等の雑所得
一時金・年金の併用それぞれ退職所得/雑所得
遺族が死亡一時金を受け取るみなし相続財産(死亡退職金)
障害給付金非課税

一時金受け取りは退職所得となり、掛金を拠出した年数を勤続年数とみなした退職所得控除(20年以下:40万円×年数、20年超:800万円+70万円×超過年数)、控除後の2分の1課税分離課税という強力な優遇を受けられます。年金受け取りなら公的年金等控除の対象です。死亡一時金には相続税の「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。

2026年1月から「10年ルール」——受け取り順序に注意

iDeCoの一時金を受け取った後、10年以内に会社の退職金(役員退職金や小規模企業共済の共済金を含む)を受け取ると、退職所得控除の重複部分が調整され、控除を満額使えなくなりました(従来の「5年」から2026年1月に拡大)。iDeCo・退職金・小規模企業共済を複数併用する方は、受け取る順番と間隔の設計が税額を大きく左右します。受け取りが視野に入ってきたら、早めに当事務所へご相談ください。

Caution注意点

  • 60歳まで引き出せない:資金拘束が最大の注意点です。事業資金に余裕を残したうえで、無理のない掛金で始めるのが原則です。
  • 元本割れの可能性:投資信託で運用する場合、運用成績により資産が掛金合計を下回ることがあります(元本確保型のみで運用することも可能です)。
  • 手数料がかかる:加入時2,829円、運用中は毎月171円程度(国民年金基金連合会・事務委託先金融機関)に加え、金融機関によって運営管理手数料がかかります。手数料無料(171円のみ)のネット証券等を選ぶのが有利です。
  • 掛金額の変更は年1回:拠出の停止・再開はいつでもできますが、金額変更は年1回に限られます。
  • 国民年金が未納の月は拠出できない:個人事業主(第1号)は国民年金保険料の納付が前提です。
  • 掛金は経費・損金にならない:本人の所得控除です(年末調整または確定申告で控除します)。

With Kyosai小規模企業共済との併用

iDeCoと小規模企業共済は併用でき、控除枠も別々です。どちらも「小規模企業共済等掛金控除」ですが、それぞれの掛金が全額控除されます。

併用した場合の年間最大控除額(2026年7月現在)
立場小規模企業共済iDeCo合計
個人事業主84万円81.6万円165.6万円
会社役員(企業年金なし)84万円27.6万円111.6万円

性格の違いを踏まえた使い分けが大切です。小規模企業共済は掛金の増減が自由で、いざというとき貸付制度があり、廃業時にはいつでも共済金を受け取れる「事業の守り」寄りの制度。iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに運用益非課税で増やせる「老後資金の攻め」寄りの制度です。資金繰りに不安があるうちは小規模企業共済を優先し、余力に応じてiDeCoを上乗せする、という順番が実務的です。

FAQよくある質問

社長一人だけの会社ですが、本当に加入できますか?

できます。役員報酬を受けて厚生年金に加入していれば第2号被保険者として加入できます(企業年金がなければ月23,000円まで)。会社の規模・従業員数・同族関係は問われません。なお、役員報酬を取らず厚生年金に加入していない場合は、国民年金の第1号被保険者として加入することになります(月68,000円まで)。

会社側で必要な手続きはありますか?

本人口座からの振替(個人払込)なら、原則ありません。2024年12月に事業主証明書が廃止され、本人だけで加入手続きが完結します。給与天引き(事業主払込)を選ぶ場合のみ、会社の登録と毎月の源泉控除事務が必要です。

掛金は会社の経費になりますか?

なりません。役員個人の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)として、年末調整または確定申告で控除します。なお、従業員向けに会社が上乗せ拠出する「iDeCo+」の事業主掛金は損金になります。

小規模企業共済とどちらを先にやるべきですか?

資金の自由度を重視するなら小規模企業共済が先というのが実務的な目安です。同共済は増減額・貸付・廃業時の受け取りなど流動性が高い一方、iDeCoは60歳まで引き出せません。節税枠を最大化したい方は両方の併用をご検討ください。

60歳より前に会社を畳んだら、積み立てたお金はどうなりますか?

原則として60歳までは受け取れません。拠出を止めて運用だけ続け、60歳以降に老齢給付金として受け取ることになります(小規模企業共済と違い、廃業しても途中では引き出せない点にご注意ください)。

今から入っても遅くないですか?

加入は65歳未満まで(2026年12月からは70歳未満まで拡大予定)、受け取り開始は最長75歳まで選べます。50代からでも、拠出時の所得控除は毎年確実に効くため、節税手段としての価値は十分あります。

※本資料は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取扱いは事実関係により異なります。拠出限度額や受け取り時の税務など、具体的なご判断は当事務所にご相談ください。制度・税制は改正される場合があります(記載内容は2026年7月時点。2026年12月施行予定の改正内容は今後変更される可能性があります)。