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For Freelancers — フリーランスの経理

フリーランスの確定申告
Web・デザイン・エンジニア・ライターの経費と節税

Webデザイナー、エンジニア、ライター、動画編集者——会社に属さず案件ごとに報酬を受け取るフリーランスは、年に一度、自分で確定申告をする必要があります。源泉徴収された報酬の還付、PCやソフトの経費、自宅で働く場合の家事按分、インボイス対応など、フリーランス特有の論点は数多くあります。本コラムでは、フリーランス・個人事業主の経理と確定申告の要点を高円寺の税理士が実務目線で整理します。

代表税理士 渡邊巧
監修・執筆 — Author
代表税理士 渡邊 巧 / W総合会計office(高円寺の税理士)
確定申告・法人税・相続税・贈与税・記帳代行・経営相談に対応。プロフィール →

Overviewフリーランスの確定申告の全体像

フリーランスは、案件ごとにクライアントから報酬を受け取る独立した個人事業主です。1年間の収入から必要経費を差し引いた利益(事業所得)に所得税・住民税がかかり、確定申告が必要になります。会社員と違い源泉徴収・年末調整で完結しないため、自分で記帳し申告します。

フリーランスの経理には、(1) 原稿料・デザイン料など報酬から源泉徴収されるものがあり、確定申告で精算・還付を受けられる、(2) PC・ソフト・通信費など経費の種類が多い、(3) 自宅作業が中心で家事按分の判断が必要、(4) クライアントとの関係でインボイスが問題になる——という特徴があります。

複式簿記で記帳して青色申告を選べば、青色申告特別控除や赤字の繰越しなど有利な取扱いを受けられます。クラウド会計や請求書アプリを使えば、振込明細・経費・請求を一元管理でき、申告の精度が上がります。

確定申告が必要となる所得ライン

専業フリーランスの場合、所得(収入−経費)が基礎控除額を超えると所得税の確定申告が必要です。基礎控除は令和7年度改正で引き上げられ、令和7年・8年分(2025・2026年)は所得水準に応じて58万〜95万円です(従来は一律48万円)。

会社員をしながら副業でフリーランスの仕事をしている場合は、給与以外の所得が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です(住民税は別途申告が必要)。

Getting Started開業届と青色申告承認申請

フリーランスとして独立したら、税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を提出します。あわせて青色申告承認申請書を出しておくと、その年から青色申告(最大65万円控除など)が使えます。

青色申告承認申請には期限があり、原則その年の3月15日まで(その年の1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内)です。期限を過ぎると、その年は白色申告となり、青色は翌年からになります。独立したら早めに手続きしておきましょう。

副業から始める場合の「事業所得」か「雑所得」か

副業フリーランスの所得は、規模・継続性・営利性などから事業所得雑所得かを判断します。一般に、帳簿書類を備え、継続的・反復的に相当規模で行っていれば事業所得として扱われやすくなります。事業所得なら青色申告特別控除や損益通算が使える一方、雑所得ではこれらが使えません。判断に迷う場合はご相談ください。

Withholding Tax報酬の源泉徴収と還付

フリーランスへの報酬のうち、原稿料・デザイン料・講演料・一定の報酬などは、支払時に源泉徴収(原則10.21%)されます。これは前払いの所得税で、確定申告で1年分の税額を精算し、納め過ぎていれば還付されます。

一方、Web制作・システム開発・プログラミングなどの報酬は、原則として源泉徴収の対象外です。同じ「フリーランス」でも、仕事の内容によって源泉徴収の有無が変わるため、支払調書や振込額で源泉徴収されているかを必ず確認しましょう。

源泉徴収された分は確定申告で取り戻す

源泉徴収は経費を考慮せず報酬額に対して差し引かれるため、経費を差し引いた本来の税額より多く前払いになっていることがよくあります。確定申告をすれば、その差額が還付されます。支払調書が届かなくても、振込明細などから源泉徴収額を集計して申告できます。

Deductible Expensesフリーランスが経費にできるもの

仕事に必要な支出は必要経費として収入から差し引けます。フリーランスは経費の種類が多く、計上漏れがないよう区分して管理することが節税につながります。

機材・ソフト

  • PC・モニター・タブレット・カメラ・周辺機器
  • デザイン・開発ソフトのサブスク(Adobe・各種SaaS)、サーバー・ドメイン代
  • 高額な機材は減価償却(青色は30万円未満〈2026年4月1日以後の取得分は40万円未満〉の特例あり)

仕事場・通信

  • 自宅家賃・水道光熱費(事業使用分を按分)、コワーキングスペースの利用料
  • インターネット・携帯などの通信費(私用兼用は按分)

外注・学習・取材

  • 他のフリーランスへの外注費(相手のインボイス登録の有無に注意)
  • 書籍・オンライン講座・セミナー・勉強会の参加費
  • 取材・打合せの交通費、参考資料の購入費

その他

  • 名刺・ポートフォリオサイト・広告などの宣伝費、振込手数料・決済手数料
  • 損害賠償責任保険、税理士報酬

Home Office自宅で働く場合の家事按分

自宅を仕事場にしているフリーランスは、家賃・水道光熱費・通信費のうち事業に使う割合(事業割合)だけを経費にできます。これを家事按分といいます。

按分の基準は、家賃なら仕事に使う部屋の面積比、電気代や通信費なら使用時間・使用日数など、合理的に説明できるものを選びます。割合を決めた根拠(部屋の面積・稼働時間など)をメモで残しておくと、税務調査でも説明しやすくなります。

プライベートとの線引き

仕事専用なら全額、私用と兼用なら事業割合だけ——が原則です。スーツや一般的な被服費、私的な飲食、家族旅行などは経費になりません。仕事の打合せ・取材など、事業との関連が説明できる支出かどうかを基準に判断しましょう。

Invoice Systemインボイス制度とフリーランス・2割特例

フリーランスの多くは年間の売上が1,000万円以下の免税事業者です。クライアント(課税事業者)は、インボイス(適格請求書)がないと支払った外注費の仕入税額控除ができないため、フリーランスに登録を求めるケースが増えました。

登録すると、免税事業者であっても課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が生じます。そこで重要になるのが、小規模事業者向けの負担軽減措置です。

インボイス登録に伴う負担軽減措置(個人事業者)
適用時期特例納付税額
〜令和8年分まで2割特例売上税額の2割
令和9年分・令和10年分3割特例売上税額の3割

登録すべきかは「取引先」で考える

取引先が課税事業者の企業中心なら、登録を求められやすく、登録した場合の負担も2割特例で抑えられます。一方、取引先が一般消費者や免税事業者中心であれば、登録の必要性は低いことがあります。なお、免税事業者であることだけを理由に一方的に報酬を引き下げることは、独占禁止法・下請法上の問題となり得ます。取引先の構成を踏まえて判断しましょう。

Tax Savingフリーランスの節税・青色申告

収入の波があるフリーランスこそ、使える制度を取りこぼさないことが大切です。代表的な節税策を整理します。

  • 青色申告特別控除(最大65万円):複式簿記での記帳+e-Tax申告(または電子帳簿保存)で65万円を所得から控除。
  • 少額減価償却資産の特例:取得価額30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満)のPC・機材を、年間300万円まで即時に経費化(青色申告の中小事業者等)。
  • 小規模企業共済:掛金(月最大7万円)が全額所得控除。引退・廃業時の退職金代わりになります。
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済):掛金(月最大20万円・累計800万円)を必要経費に算入可能。取引先倒産による売掛金回収不能への備えにも。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):掛金が全額所得控除。老後資金を作りながら節税。
  • 青色事業専従者給与:配偶者などが事務・経理に従事する場合、相当額を経費にできます。

案件の増減で収入の変動が大きい場合は、赤字を翌年以降3年間繰り越せる青色申告のメリットも大きくなります。

Business Tax & Insurance個人事業税・社会保険の扱い

所得が一定額を超えると、業種によっては個人事業税(多くは税率5%、事業主控除290万円)の対象になります。デザイン業などは課税対象(第三種事業)ですが、文筆業(ライター)など法定の業種に当たらない場合は課税されないことがあり、業務の内容で扱いが分かれます。判断に迷う場合はご相談ください。

フリーランスは会社員と違い、自分で健康保険・年金に加入します。国民健康保険・国民年金の保険料は、必要経費ではなく社会保険料控除(所得控除)として差し引きます。経費と所得控除を混同しないことが正確な申告につながります。

「経費」と「所得控除」の違い

経費は事業の利益(事業所得)を計算する段階で売上から差し引くもの、所得控除はその利益から個人の事情に応じて差し引くものです。国民健康保険・国民年金・小規模企業共済・iDeCo・生命保険料などは所得控除にあたり、事業の経費には入れません。両者を正しく区分することが、適正な納税につながります。

Incorporation法人化を検討するタイミング

売上・利益が安定して大きくなってくると、法人化(法人成り)が選択肢になります。一般に、課税所得800万円超・売上1,000万円超が法人化を検討する目安とされます。

法人化のメリットは、自分や家族への役員報酬による所得分散と給与所得控除の活用、設立から最大2年間の消費税免除(資本金1,000万円未満などの要件)、対外的な信用、退職金などです。一方で、社会保険の加入義務、設立・運営コスト、赤字でも生じる均等割、事務負担の増加といったデメリットもあります。当事務所では、個人のまま続ける場合と法人化した場合の税負担・社会保険負担を試算し、判断材料をご提供します。

FAQよくある質問

副業の収入が少しだけあります。確定申告は必要ですか?

会社員で給与以外の所得(フリーランスの利益)が年20万円を超える場合は、所得税の確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は別途必要になります。

源泉徴収された報酬は、確定申告で戻ってきますか?

経費を差し引いた本来の税額より源泉徴収額が多ければ、その差額が還付されます。原稿料・デザイン料などは源泉徴収されていることが多いので、振込明細で確認しましょう。

自宅の家賃はどこまで経費にできますか?

仕事に使う部屋の面積比など、合理的な割合(事業割合)で按分した分を経費にできます。按分の根拠をメモで残しておくと安心です。

PCやソフトはいつ経費にできますか?

取得価額10万円未満は購入年に全額、青色申告なら30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満)を年間300万円まで即時に経費化できます。それ以上は耐用年数に応じて減価償却します。

インボイス登録はした方がいいですか?

取引先が課税事業者の企業中心なら登録を求められやすく、2割特例で負担も抑えられます。取引先が一般消費者中心なら必要性は低いことがあります。取引先の構成で判断しましょう。

Our Support当事務所のサポート

W総合会計officeでは、開業届・青色申告承認申請の手続き、源泉徴収された報酬の精算・還付、PC・ソフト・通信費など経費の整理と家事按分、インボイス登録と2割特例・3割特例の有利判定、青色申告などの節税、帳簿付け・記帳代行、事業所得か雑所得かの判断、法人化のシミュレーション、確定申告までを一貫してサポートします。クラウド会計の導入支援も行っています。お気軽にご相談ください。

※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取扱いは事実関係により異なります。源泉徴収の対象判定、家事按分、事業所得か雑所得かの区分、個人事業税の取扱いなど、具体的なご判断は当事務所にご相談ください。税制・特例の要件は改正される場合があります(記載内容は2026年6月時点)。