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Overview整体・セラピスト・トレーナーの確定申告の全体像
整体師・リラクゼーションセラピスト・パーソナルトレーナーの働き方は、(1) 自分の店舗・サロンを構えて開業する、(2) 店舗と業務委託契約を結び歩合で報酬を受け取る、(3) 出張・フリーランスとして施術する、と多様です。いずれも雇用されて給与をもらう場合を除き、税務上は個人事業主として扱われ、確定申告が必要になります。
1年間の収入から必要経費を差し引いた利益(事業所得)に所得税・住民税がかかります。会社員のように源泉徴収・年末調整で完結しないため、自分で記帳し申告します。複式簿記で記帳して青色申告を選べば、青色申告特別控除や赤字の繰越しなど有利な取扱いを受けられます。
この業種には、(a) 業務委託か給与かの区分、(b) 国家資格の有無で消費税の扱いが変わる、(c) 施術ベッドや店舗など初期投資・経費が大きい、(d) 自宅サロンや出張で家事按分が必要——といった特徴があります。
確定申告が必要となる所得ライン
専業(施術が主)の場合、所得(収入−経費)が基礎控除額を超えると所得税の確定申告が必要です。基礎控除は令和7年度改正で引き上げられ、令和7年・8年分(2025・2026年)は所得水準に応じて58万〜95万円です(従来は一律48万円)。
会社員をしながら施術の副収入がある場合は、給与以外の所得が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です(住民税は別途申告が必要)。
Contract vs Employment「業務委託」か「給与」か——外注と雇用の区分
リラクゼーション店や整体院と業務委託契約を結んで働く場合、その報酬が税務上「業務委託(事業所得)」か「給与」かが重要な論点です。契約書のタイトルが「業務委託」でも、実態が雇用なら給与と判断されることがあります。
区分は名称ではなく働き方の実態でみます。シフト・出勤が指定されているか、指揮監督を受けているか、道具・備品を自分で負担しているか、報酬が完全歩合か固定給か——といった要素を総合的に判断します。
| 着眼点 | 業務委託(事業所得) | 給与 |
|---|---|---|
| 時間の拘束 | 自分で調整できる | シフト・出勤を指定 |
| 指揮監督 | 自分の裁量で施術 | 店の指示に従う |
| 道具・備品 | 自分で用意・負担 | 店が提供 |
| 報酬の性格 | 売上に応じた歩合 | 固定給・時給 |
「業務委託」でも給与とされるとどうなるか
店が指定するシフトで指示どおりに施術し、固定的な保証があるような実態は、契約名が業務委託でも給与とされることがあります。給与となると、店側に源泉徴収・社会保険の問題が生じ、施術者側は事業所得ではなく給与所得となって、経費は概算の給与所得控除のみ、青色申告のメリットも受けられません。業務委託として申告するなら、請求書・歩合明細・道具の自己負担など外注の実態を裏づける書類を残しておくことが大切です。
Consumption Tax国家資格の有無と消費税の違い
この業界で特に注意したいのが消費税の扱いです。柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師といった国家資格者が、医師の同意などのもと健康保険(療養費)の対象として行う施術は、消費税が非課税とされます。
一方、整体・カイロプラクティック・リラクゼーション・パーソナルトレーニングなどは、国家資格を要しない自由なサービスであり、保険外(自費)のため消費税の課税対象です。同じ「身体を扱う仕事」でも、資格と保険適用の有無で消費税の扱いが大きく変わります。
| 施術 | 消費税 |
|---|---|
| 柔整・あマ指・はり灸(療養費=保険適用分) | 非課税 |
| 同・自費(保険外)の施術 | 課税 |
| 整体・カイロ(無資格) | 課税 |
| リラクゼーション・もみほぐし | 課税 |
| パーソナルトレーニング・指導 | 課税 |
課税売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務
整体・リラク・トレーニングなど課税売上が、基準期間(原則2年前)で1,000万円を超えると、消費税の課税事業者になります。保険適用の施術(非課税)と自費の施術(課税)が混在する場合は、売上を区分して管理することが大切です。資格・施術内容により扱いが異なるため、自分の売上がどちらに当たるか迷う場合はご確認ください。
Deductible Expenses経費にできるもの
仕事に必要な支出は必要経費として収入から差し引けます。整体・セラピスト・トレーナーは設備や消耗品、技術習得の費用が多く、計上漏れがないよう区分して管理することが節税につながります。
設備・備品
- 施術ベッド・マッサージチェア・トレーニング機材・ストレッチ用具
- 高額な機材・設備は減価償却(青色は30万円未満〈2026年4月1日以後の取得分は40万円未満〉の特例あり)
消耗品・材料
- オイル・クリーム・タオル・シーツ・ペーパー・消毒用品
- ユニフォーム・施術着(業務専用のもの)、その洗濯・クリーニング代
店舗・運営
- 店舗の家賃・水道光熱費(自宅サロンは事業使用分を按分)、内装・看板
- 予約システム・POS・決済手数料、損害賠償責任保険
技術・集客・その他
- 技術講習・セミナー・資格更新の費用、専門書
- ホームページ・SNS広告・チラシ・ポータルサイト掲載料などの広告宣伝費
- 携帯・通信費(私用兼用は按分)、税理士報酬
Home Salon自宅サロン・出張の家事按分
自宅の一室をサロンにしている場合や、私用と兼用するスマホ・車を使う場合は、事業に使う割合(事業割合)だけを経費にします。これを家事按分といいます。
家賃なら施術スペースの面積比、水道光熱費・通信費なら使用時間・使用日数、出張用の車なら走行距離の割合など、合理的に説明できる基準で按分します。割合の根拠(面積・稼働時間・走行距離など)をメモで残しておくと、税務調査でも説明しやすくなります。
プライベートとの線引き
施術専用なら全額、私用と兼用なら事業割合だけ——が原則です。自分の健康管理のためのジム代・サプリ・私的な施術など、事業との関連を説明しにくい支出は経費になりません。事業のために必要だと説明できる支出かどうかを基準に判断しましょう。
Invoice Systemインボイス制度と2割特例
整体・セラピスト・トレーナーの多くは、年間の売上が1,000万円以下の免税事業者です。お客様が一般消費者(個人)中心であれば、お客様はインボイスを必要としないため、登録の必要性は高くありません。
一方、店舗と業務委託契約を結び、店(課税事業者)に報酬を請求する立場の場合や、法人・整骨院などと取引がある場合は、相手が仕入税額控除のためにインボイス登録を求めることがあります。登録すると免税事業者でも課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が生じます。
| 適用時期 | 特例 | 納付税額 |
|---|---|---|
| 〜令和8年分まで | 2割特例 | 売上税額の2割 |
| 令和9年分・令和10年分 | 3割特例 | 売上税額の3割 |
登録すべきかは「お客様が誰か」で考える
お客様が一般消費者中心なら、登録のメリットは小さいことが多いです。店への請求や法人との取引が中心で登録を求められている場合は、登録した場合の納税負担(2割特例で売上税額の2割程度)と、登録しないことによる取引への影響を比べて判断します。判断に迷う場合はご相談ください。
Tax Saving節税・青色申告
開業初期は設備投資がかさみ、収入も安定しないことが多い業種です。使える制度を取りこぼさないことが大切です。
- 青色申告特別控除(最大65万円):複式簿記での記帳+e-Tax申告(または電子帳簿保存)で65万円を所得から控除。
- 少額減価償却資産の特例:取得価額30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満)の施術ベッド・機材を、年間300万円まで即時に経費化(青色申告の中小事業者等)。
- 小規模企業共済:掛金(月最大7万円)が全額所得控除。引退・廃業時の退職金代わりになります。
- iDeCo(個人型確定拠出年金):掛金が全額所得控除。老後資金を作りながら節税。
- 青色事業専従者給与:配偶者などが受付・経理に従事する場合、相当額を経費にできます。
開業初年度に内装・機材で赤字になっても、青色申告なら赤字を翌年以降3年間繰り越せるため、軌道に乗った後の黒字と相殺できます。
Business Tax & Insurance個人事業税・社会保険の扱い
所得が一定額を超えると、これらの事業は個人事業税(事業主控除290万円)の対象になります。あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅう・柔道整復などの医業に類する事業は税率3%、整体・リラクゼーション・トレーニングなどは扱いが分かれる場合があるため、自分の事業区分は都道府県税事務所や当事務所にご確認ください。事業主控除があるため、所得290万円までは個人事業税はかかりません。
独立した施術者は会社員と違い、自分で健康保険・年金に加入します。国民健康保険・国民年金の保険料は、必要経費ではなく社会保険料控除(所得控除)として差し引きます。
「経費」と「所得控除」の違い
経費は事業の利益(事業所得)を計算する段階で売上から差し引くもの、所得控除はその利益から個人の事情に応じて差し引くものです。国民健康保険・国民年金・小規模企業共済・iDeCo・生命保険料などは所得控除にあたり、事業の経費には入れません。両者を正しく区分することが、適正な納税につながります。
Incorporation法人化を検討するタイミング
店舗を増やしたり、スタッフを雇って規模が大きくなってくると、法人化(法人成り)が選択肢になります。一般に、課税所得800万円超・売上1,000万円超が法人化を検討する目安とされます。
法人化のメリットは、自分や家族への役員報酬による所得分散と給与所得控除の活用、設立から最大2年間の消費税免除(資本金1,000万円未満などの要件)、対外的な信用、退職金などです。一方で、社会保険の加入義務、設立・運営コスト、赤字でも生じる均等割、事務負担の増加といったデメリットもあります。当事務所では、個人のまま続ける場合と法人化した場合の税負担・社会保険負担を試算し、判断材料をご提供します。
FAQよくある質問
業務委託のリラクゼーション店で働いています。確定申告は必要ですか?
業務委託で受け取る報酬は事業所得(または雑所得)となり、原則として確定申告が必要です。店が給与として源泉徴収・年末調整をしている場合は別ですが、契約形態と支払いの実態を確認しましょう。
整体やリラクゼーションの売上に消費税はかかりますか?
整体・カイロ・リラクゼーション・パーソナルトレーニングは課税対象です。国家資格者が保険(療養費)の対象として行う施術は非課税ですが、自費分は課税です。課税売上が1,000万円を超えると課税事業者になります。
施術ベッドや機材はいつ経費にできますか?
取得価額10万円未満は購入年に全額、青色申告なら30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満)を年間300万円まで即時に経費化できます。それ以上は耐用年数に応じて減価償却します。
自宅サロンの家賃や光熱費は経費になりますか?
施術に使う部分を面積・使用時間などで按分すれば、その分を経費にできます。按分の根拠をメモで残しておくと安心です。
開業初年度は赤字でした。申告した方がよいですか?
はい。青色申告をしておけば、赤字を翌年以降3年間繰り越して黒字と相殺できます。設備投資で赤字になりやすい開業初期こそ申告のメリットがあります。
Our Support当事務所のサポート
W総合会計officeでは、業務委託か給与かの区分の整理、国家資格の有無による消費税(非課税/課税)の判定と売上区分、施術ベッド・オイル・店舗家賃など経費の整理と家事按分、インボイス登録と2割特例・3割特例の有利判定、青色申告などの節税、帳簿付け・記帳代行、個人事業税や社会保険料控除の扱い、法人化のシミュレーション、確定申告までを一貫してサポートします。開業前のご相談から対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取扱いは事実関係により異なります。業務委託か給与かの判定、施術内容と消費税(非課税/課税)の区分、家事按分、個人事業税の取扱いなど、具体的なご判断は当事務所にご相談ください。税制・特例の要件は改正される場合があります(記載内容は2026年6月時点)。