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【ホテル・宿泊業オーナーの経理ガイド】OTA売上の計上・経費・消費税のポイントを税理士が解説

代表税理士 渡邊巧
監修・執筆 — Author
代表税理士 渡邊 巧 W総合会計office(高円寺の税理士)
確定申告・法人税・相続税・贈与税・記帳代行・経営相談に対応。
公開:2026年6月 / 最終更新:2026年9月2日

杉並区高円寺の税理士・W総合会計office(代表税理士:渡邊巧)が、ホテル・旅館・民泊(簡易宿所)を営むオーナー向けに、宿泊業ならではの売上計上・経費・消費税のポイントを実務目線で整理します。

宿泊予約サイト(OTA)からの送客、現地での現金払い、朝食やレストランの売上、リネンやアメニティの仕入れ——。ホテル・宿泊業は「売上がどこから・いつ入ってくるか」が複雑で、経費の種類も多いのが特徴です。そのため、記帳のやり方をひとつ間違えると、売上の計上漏れや消費税の計算ミスにつながりやすい業種でもあります。

この記事では、宿泊業の経理でつまずきやすいOTA経由の売上計上現金売上と売掛の分け方、そして食材を中心とした経費と消費税(軽減税率)の確認について、実務に沿ってまとめます。


1. ホテル・宿泊業の確定申告の全体像

個人で宿泊施設を営んでいる場合、1年間の利益(売上−経費)に対して所得税・住民税がかかり、確定申告が必要です。事業の規模が大きくなり、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の申告も必要になります。

宿泊業は、設備投資(建物・内装・備品)が大きく、稼働の波もあるため、減価償却や赤字の繰り越しをうまく使えるかどうかで税負担が大きく変わります。「青色申告にしているか」「日々の数字をきちんと残せているか」が、そのまま申告の精度に直結します。


2. 宿泊業で一番つまずく「売上計上」

宿泊業の経理で最初の関門になるのが、売上の計上です。飲食店のように「レジを締めれば1日の売上が確定する」とはいかず、入金経路が複数に分かれているのが理由です。

窓口(フロント)のシステムだけでは、プラットフォーム別の売上が見えない

フロントの予約管理システム(PMS)やレジでは、「どの予約サイト経由でいくら売れたか」というプラットフォーム別の内訳までは分からないことが多いのが実情です。画面上は宿泊実績や室料の合計が出ても、楽天トラベル・じゃらん・Booking.com・Airbnbなどサイトごとの売上や手数料が集計されていない——という施設は珍しくありません。

実務のポイント:そこで現実的な運用としては、レジ(POS)からはその場で受け取った「現金売上」だけを日々記帳し、OTA経由の売掛分は後日まとめて計上する、という二段構えにするのが分かりやすい方法です。

OTA(売掛)の売上は、翌月の請求書・精算書で計上する

OTA経由の予約は、宿泊代金がいったん予約サイト側に入り、手数料を差し引いた金額が翌月以降にまとめて施設へ振り込まれる形が一般的です。そのため売上が確定するタイミングと入金のタイミングがズレます。

そこで実務では、翌月に届く各プラットフォームの請求書(精算書・支払明細)を見て、サイトごとの売上と手数料をまとめて売掛分として計上します。流れを整理すると次のとおりです。

注意:この運用で気をつけたいのが「二重計上」と「計上漏れ」です。現地でOTA予約分の追加料金だけを現金で受け取ったようなケースでは、現金分とサイト請求分が重複していないか・抜けていないかの突き合わせが必要です。月末時点で「まだ請求書が来ていない宿泊分」がある場合は、売上の期ズレにも注意します。


3. ホテル・宿泊業が経費にできるもの【具体例】

仕入れ・運営にかかる費用

人件費

施設の運営費

集客・その他

ポイント:期末に残った食材・アメニティなどの在庫(棚卸資産)は、その年の経費から除く必要があります。建物・大型設備は一度に経費にできず、減価償却で複数年に分けて計上します。


4. 経費の「消費税の確認」が大変な理由

宿泊業の経費は食品・食材の仕入れが多いのが大きな特徴です。ここで問題になるのが消費税の税率区分です。

食材は軽減税率8%、それ以外は10%が混在する

つまり、同じ「仕入れ」でも1枚の領収書・レシートの中に8%と10%が混在することが日常的に起こります。スーパーや業務用食品店でまとめ買いをすると、食材(8%)とラップ・洗剤・酒類(10%)が1枚のレシートに並ぶ——というのは宿泊業では珍しくありません。

実務の悩みどころ:消費税を正しく計算するには、この8%と10%を1件ずつ確認して分けて記帳する必要があります。ところが件数が多いうえ、後からまとめて確認しようとすると、レシートの印字が薄れていたり、何の品目か思い出せなかったりして、非常に手間がかかります。「確定申告の直前に半年分のレシートを前に途方に暮れる」という事態になりがちなのが、この業種の経費まわりの実情です。

対策は「ためずに、その都度分ける」こと

「日々の小さな手間」を惜しまないことが、結果的に申告期の負担と計算ミスを大きく減らします。記帳代行を使えば、この区分作業そのものを当事務所に任せることもできます。


5. 宿泊業ならではの消費税の注意点

インボイス制度と負担軽減措置

インボイス登録をした個人事業主には、消費税の負担を抑える経過措置があります。

食材など仕入れが多い施設は、本則課税(実額で仕入税額控除)が有利なこともあれば、簡易課税や2割特例が有利なこともあります。どの方式が一番有利かは仕入れ構成と売上規模で変わるため、消費税は事前のシミュレーションが効果的です。

海外OTAへの手数料・宿泊税にも注意


6. 青色申告で節税する


7. 令和8年分(2026年分)の改正ポイント

令和8年度改正により、令和8年分(2026年分)から基礎控除の本則が62万円に引き上げられました(令和7年分は58万円、令和6年分までは48万円)。さらに令和8年・9年分は期間限定の上乗せがあり、合計所得489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円、655万円超2,350万円以下は62万円となります。あわせて給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円に引き上げられ、令和8年・9年分は給与収入220万円以下の場合にさらに5万円が上乗せされて74万円になります。扶養親族等の合計所得金額の要件も58万円から62万円になりました(令和8年12月1日施行・令和8年分以後の所得税に適用)。控除が増えるぶん、税負担が軽くなる可能性があります。なお、上乗せは令和8年・9年分の措置です。令和10年分以後は区分が変わり、合計所得132万円以下の方に37万円が上乗せされて99万円となる予定です。


8. 宿泊業の経理をスムーズに進める3つのコツ

  1. 現金売上とOTA売掛を最初から分けて管理する:現金はレジから日次で、OTAは翌月の請求書で月次に——とルールを決めると、計上漏れ・二重計上を防げます。
  2. 食材レシートの8%/10%はその場で区分する:後回しにすると確認が一気に大変になります。会計ソフトへのこまめな入力が効きます。
  3. 消費税の方式は早めに税理士へ相談する:本則課税・簡易課税・2割特例で納税額が変わるため、決算前の相談が効果的です。

9. よくある質問

OTA経由の売上は、入金された額を売上にすればよいですか?

いけません。予約サイトの手数料を差し引く前の総額が売上で、手数料は経費です。入金額だけを売上にすると売上も経費も過少になり、消費税の計算も狂います。

現金売上とOTAの売掛は、どう分けて管理すればよいですか?

現金はレジから日次で、OTAは翌月の請求書で月次に——とルールを決めると、計上漏れと二重計上を防げます。最初にルールを決めておくことが、あとの手間を大きく減らします。

食材の仕入れは8%ですか、10%ですか?

酒類以外の飲食料品は軽減税率8%、酒類・アメニティ・消耗品・水道光熱費・各種手数料は10%です。1枚のレシートに両方が混在するので、その場で区分するのが結局いちばん早く済みます。

簡易課税だと宿泊業は何種になりますか?

原則として第5種事業(サービス業、みなし仕入率50%)です。施設内のレストランなど飲食を提供する部分は区分が異なるため、売上の内訳によって有利不利が変わります。

2割特例はいつまで使えますか?

個人事業主は2026年分の申告(2027年3月)まで使えます。その後継として、2027年分・2028年分には3割特例が適用されます。


ホテル・宿泊業の税務は、専門の税理士にお任せください

W総合会計office(東京都杉並区高円寺) は、宿泊業をはじめ個人事業主・中小企業の税務を数多くサポートしています。

「OTAごとの売上集計が追いつかない」「食材レシートの消費税区分が大変」「記帳から申告までまとめて任せたい」——そんな方は、お気軽にお問い合わせください。

宿泊業の売上計上を含む記帳と確定申告の進め方は、確定申告の代行記帳代行(丸投げOK) のページにまとめています。


※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成した一般的な解説です。税制は改正される場合があり、個別の状況により取り扱いが異なります。実際の申告にあたっては税理士にご相談ください。

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