【飲食店オーナーの確定申告ガイド】経費・消費税・節税のポイントを税理士が解説
杉並区高円寺の税理士・W総合会計office(代表税理士:渡邊巧)が、個人経営の飲食店オーナー向けに確定申告・経費・消費税のポイントをわかりやすく解説します。
食材の仕入れ、アルバイトの給料、家賃、水道光熱費——。飲食店は出ていくお金の種類が多く、「どこまで経費になるの?」「消費税の申告ってどうすれば?」と頭を抱えるオーナーは少なくありません。
この記事では、飲食店の税務に対応してきた税理士の視点から、経費にできるもの、まかない・自家消費という飲食店ならではの論点、消費税(軽減税率・インボイス)の注意点、2027年4月から予定されている食料品の消費税1%への引下げが飲食店に与える影響、そして青色申告での節税まで実務に沿ってまとめます。
Contents
1. 個人経営の飲食店は確定申告が必要
個人でお店を営んでいる場合、1年間の利益(売上−経費)に対して所得税・住民税がかかり、確定申告が必要です。法人化していなくても、個人事業主として毎年の申告が義務になります。
赤字の年でも、青色申告をしていれば損失を翌年以降に繰り越せるなど、申告したほうが有利になるケースがあります。「開業初年度で赤字だから」と申告を見送るのは、もったいない選択になりがちです。
2. 飲食店が経費にできるもの【具体例】
売上原価(仕入れ)
- 食材・食品・飲料の仕入れ代
- 調味料、油、製菓・製パン材料 など
ポイント:期末に残った在庫(棚卸資産)は、その年の経費から除く必要があります。決算時の棚卸しは正確に行いましょう。
人件費
- アルバイト・パート・社員の給料
- まかない費、社会保険料の事業主負担分
- 家族へ支払う給与(青色事業専従者給与として届出が必要)
店舗の運営費
- 店舗の家賃・共益費、駐車場代
- 水道光熱費(ガス・電気・水道)
- 厨房機器・食器・調理器具・備品
- おしぼり・割り箸・容器などの消耗品
- 制服・ユニフォームのクリーニング代
集客・その他
- メニュー表・看板・チラシ・HP・SNS広告の費用
- 食器洗剤・清掃用品、ゴミ処理費用
- 損害保険料、リース料(POSレジ・コーヒーマシン等)
- 借入金の利息、税理士報酬
開業時の費用
開店前にかかった内装工事費・厨房設備・敷金礼金などは、「開業費」や「減価償却資産」として複数年に分けて経費にできるものがあります。開業初年度の申告で大きく差が出るため、領収書はすべて保管しておきましょう。
3. まかないは経費になる?——給与課税されない2つの条件
従業員に出すまかないは、飲食店でほぼ必ず出てくる論点です。材料の費用を経費に落とすこと自体はできますが、条件を外すと「現物給与」として従業員の給与に加算され、源泉徴収の対象になります。
給与として扱わなくてよいのは、次の2つを両方満たすときです(所得税基本通達36-38の2)。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 従業員からの徴収 | 従業員が食事の価額の50%以上を負担していること |
| ② 事業主の負担額 | 食事の価額から徴収額を引いた残りが月額7,500円以下であること |
この7,500円は、2026年(令和8年)の通達改正で引き上げられた金額です。従来より基準が緩和されているため、「昔は無理だと言われた」という方も、いまは条件を満たせる可能性があります。
「食事の価額」はメニュー価格ではありません
ここが飲食店にとって有利な点です。判定に使う「食事の価額」は、店で調理して出す場合、その食事の材料等に要する直接費の額とされています(所得税基本通達36-38)。つまりメニューの売価ではなく、原価で評価できます。
売価1,000円のまかないでも、材料費が300円なら「価額は300円」です。従業員から150円(50%以上)を徴収すれば①を満たし、事業主負担は月あたりでも7,500円に収まりやすくなります。まったく徴収していない場合は①を満たさないため、少額でも徴収する運用にしておくのが実務的です。
4. オーナーや家族が食べた分は「売上」になります
意外に知られていませんが、店の食材をオーナーや家族が食べた分は、経費から除くだけでは足りません。「売上」として収入に計上する必要があります。
事業を営む人がたな卸資産を家事のために消費した場合、その消費した時の価額に相当する金額を総収入金額に算入すると定められています(所得税法第39条)。これを家事消費(自家消費)といいます。
いくらで計上すればよいのかについては、実務上の取扱いがあります。取得価額(仕入原価)以上の金額を帳簿に記載して収入に算入していれば、通常の販売価額のおおむね70%を下回らない限り認められます(所得税基本通達39-2)。
つまり実務では、「仕入原価以上、かつ通常の売価の70%以上」を目安に計上します。売価1,000円・原価300円の料理なら、700円で計上しておけば安全圏です。
税務調査で必ず確認される項目です。飲食店は現金商売で在庫が動く業種のため、家事消費の計上漏れは指摘されやすいところです。「家族の食事分は仕入から抜いている」というだけでは足りないケースがあるため、記帳の方法を決めておいてください。
5. 飲食店ならではの「消費税」の注意点
飲食店は、消費税の扱いで特に注意が必要な業種です。
軽減税率(8%)と標準税率(10%)の区分
- 店内での飲食(イートイン):標準税率 10%
- テイクアウト・出前・宅配の食品:軽減税率 8%
同じ商品でも、店内かテイクアウトかで税率が変わります。レジやメニューでの区分管理が必要です。
インボイス制度と負担軽減措置
インボイス登録をした個人事業主には、消費税の負担を抑える経過措置があります。
- 2割特例(売上にかかる消費税の2割を納税):個人事業主は2026年分の申告(2027年3月)まで適用できます。
- 3割特例:2割特例の後継として、2027年分・2028年分に適用されます(個人事業主が対象)。
- 簡易課税制度:店内飲食は原則「第4種事業(みなし仕入率60%)」です。ただし持ち帰り用に調理して販売する部分は「第3種事業(みなし仕入率70%)」に区分されることがあります(消費税法施行令第57条第5項では、第3種事業の製造業に「製造した棚卸資産を小売する事業」を含むとされています)。みなし仕入率が10ポイント違うため、イートインとテイクアウトの売上区分は消費税の税率だけでなく簡易課税の計算にも効いてきます。
どの方法が一番有利かは、お店の仕入れ構成や売上規模によって変わります。選択を誤ると納税額が大きく変わるため、消費税は特に税理士によるシミュレーションをおすすめします(当事務所でも承っています)。
6. 【2027年4月から】食料品の消費税1%——飲食店への影響
2026年(令和8年)8月5日に閣議決定された政府の基本方針で、軽減税率の対象となっている飲食料品に係る消費税率を1%とする方針が示されました。適用は令和9年(2027年)4月1日から2年間です(内閣官房「飲食料品に係る消費税率の引下げ及び給付付き税額控除(政府の基本方針)」)。
まず前提として:これは閣議決定された政府の基本方針であり、実施には法律の改正が必要です。この記事の時点では、まだ法律にはなっていません。詳細な取扱いは今後の法案・政省令で固まります。以下は現時点で分かっている枠組みをもとにした整理です。
いちばん大事な点:店内飲食は1%になりません
ここを取り違えると経営判断を誤ります。引下げの対象は「軽減税率の対象となっている飲食料品」です。前章のとおり、店内での飲食(外食)はもともと軽減税率の対象ではなく、標準税率10%です。
| 売上の区分 | 現在 | 2027年4月以降 |
|---|---|---|
| 店内飲食(イートイン) | 10% | 10%のまま |
| テイクアウト・出前・宅配 | 8% | 1% |
| 店内での酒類の提供 | 10% | 10%のまま |
現在は店内10%・持ち帰り8%で差は2ポイントです。これが9ポイント差に広がります。同じ弁当を「店内で食べる」か「持ち帰る」かで、税額が大きく変わることになります。
注意点① イートインかテイクアウトかの判定が、これまで以上に重要になります
差が2ポイントのうちは、区分を多少あいまいに運用していても影響は限定的でした。9ポイント差になると話が変わります。
- レジでの意思確認を、いまより明確な運用に切り替える必要があります。判定は「販売する時点でどちらとして提供したか」で行います
- 「持ち帰り」で会計したお客様が店内のイートインスペースで食べるケースの扱いを、店として決めておく必要があります
- 税務調査でも、区分の根拠が問われやすくなると考えられます。レジの記録の残し方を含めて設計しておくべき論点です
注意点② 仕入れの消費税が減るため、納税額が増える場合があります
見落とされやすいのがこちらです。食材の仕入れにかかる消費税も1%になります。
本則課税(原則課税)で申告している場合、納める消費税は「売上で預かった消費税 − 仕入れで支払った消費税」です。店内飲食が中心の店は、預かる側が10%のまま・支払う側が1%に下がるため、差額である納税額は増える方向に動きます。
「食料品が減税されるから、うちの税負担も軽くなる」とは限りません。イートイン中心の店ほど、この影響を受けやすくなります。
注意点③ 簡易課税・2割特例との有利不利が逆転する可能性があります
簡易課税や2割特例は、実際の仕入れがいくらかに関係なく、売上から一定割合で納税額を計算する方式です。仕入れにかかる消費税が下がっても計算結果は変わりません。
つまり、仕入れの消費税が減る局面では、本則課税が不利に・簡易課税や特例が相対的に有利に傾きます。これまで「本則課税のほうが得」と判断して選択していた店でも、2027年4月以降は結論が変わることがあります。
簡易課税は原則として適用を受けようとする課税期間の開始前までに届出が必要で、あとから遡って選ぶことはできません。ただし例外があり、2割特例・3割特例を使った翌課税期間に簡易課税へ移る場合に限り、その課税期間の申告期限までに届出書を出せばその年から適用できます。2割特例を使っている個人のお店なら、令和9年分は実績を見てから簡易課税を選べるということです。いずれにせよ、税率が動く前に試算しておくことをおすすめします。
注意点④ レジ・会計システムの改修と、2年後の「戻し」
- 飲食料品が1%になると、世の中には10%・8%(新聞など)・1%の税率が並ぶことになります。レジ・POS・会計ソフトが3税率に対応できるか、早めにベンダーへ確認してください
- メニューの価格表示をどうするか(税込表示の見直し、店内価格と持ち帰り価格を分けるか)も判断が必要です
- この措置は2年間の期限付きです。2029年春には元に戻る前提のため、改修も価格改定も2回発生するものとして計画を立ててください
制度が固まりしだい、本記事を更新します。自店にどう影響するか、簡易課税と本則課税のどちらが有利かの試算をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
7. 青色申告で節税する
- 青色申告特別控除(最大65万円):利益からさらに最大65万円を差し引ける(e-Tax+複式簿記が条件)。
- 赤字の繰り越し(最長3年):開業初期や設備投資の年の損失を、黒字の年と相殺できる。
- 家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)。
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満に引き上げ)の厨房機器・備品を一括で経費に(年間合計300万円まで)。
8. 令和8年分(2026年分)の改正ポイント
令和8年度改正により、令和8年分(2026年分)から基礎控除の本則が62万円に引き上げられました(令和7年分は58万円、令和6年分までは48万円)。さらに令和8年・9年分は期間限定の上乗せがあり、合計所得489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円、655万円超2,350万円以下は62万円となります。あわせて給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円に引き上げられ、令和8年・9年分は給与収入220万円以下の場合にさらに5万円が上乗せされて74万円になります。扶養親族等の合計所得金額の要件も58万円から62万円になりました(令和8年12月1日施行・令和8年分以後の所得税に適用)。控除が増えるぶん、手取りが増える・税負担が軽くなる可能性があります。なお、上乗せは令和8年・9年分の措置です。令和10年分以後は区分が変わり、合計所得132万円以下の方に37万円が上乗せされて99万円となる予定です。
9. 確定申告をスムーズに進める3つのコツ
- 売上・仕入れを毎日記録する:日々の売上とレジ締めを習慣にすると、申告期がぐっと楽になります。会計ソフトの活用がおすすめです。
- イートインとテイクアウトの売上を分けて管理する:消費税の区分計算に必要です。
- 消費税は早めに税理士へ相談する:課税方式の選び方ひとつで納税額が変わるため、決算前の相談が効果的です。
10. よくある質問
まかないは経費になりますか?
材料費を経費にすること自体はできます。ただし、従業員が食事の価額の50%以上を負担していることと、事業主の負担額が月額7,500円以下であることの両方を満たさないと、現物給与として源泉徴収の対象になります。
まかないの「価額」はメニュー価格ですか?
いいえ。店で調理して出す場合、判定に使う「食事の価額」はその食事の材料等に要する直接費の額とされています(所得税基本通達36-38)。売価1,000円でも材料費が300円なら価額は300円です。
家族が店の食事を食べた分は、どう処理しますか?
経費から除くだけでは足りず、「売上」として収入に計上する必要があります(家事消費)。実務では、仕入原価以上、かつ通常の売価の70%以上を目安に計上します。税務調査で必ず確認される項目です。
2027年4月から食料品の消費税が1%になると聞きました。店内飲食も下がりますか?
下がりません。引下げの対象は軽減税率の対象となっている飲食料品で、店内での飲食(外食)はもともと軽減税率の対象外の10%です。テイクアウトが1%、店内が10%で、差が9ポイントに広がる見込みです。なお、これは閣議決定された政府の基本方針の段階で、実施には法律の改正が必要です。
簡易課税だと飲食店は何種になりますか?
店内飲食は原則として第4種事業(みなし仕入率60%)です。ただし持ち帰り用に調理して販売する部分は第3種事業(みなし仕入率70%)に区分されることがあります。イートインとテイクアウトの売上区分は、税率だけでなく簡易課税の計算にも効いてきます。
飲食店の税務は、専門の税理士にお任せください
W総合会計office(東京都杉並区高円寺) は、飲食店をはじめ個人事業主の税務を数多くサポートしています。
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- 新高円寺駅から徒歩3分・高円寺駅から徒歩11分/営業時間 9:00〜20:00(土日祝を除く)
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飲食店の確定申告・記帳をお任せいただく場合の範囲と、ご準備いただく資料は 確定申告の代行・記帳代行(丸投げOK) のページをご覧ください。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成した一般的な解説です。税制は改正される場合があり、個別の状況により取り扱いが異なります。実際の申告にあたっては税理士にご相談ください。