【ホテル・宿泊業オーナーの経理ガイド】OTA売上の計上・経費・消費税のポイントを税理士が解説
杉並区高円寺の税理士・W総合会計office(代表税理士:渡邊巧)が、ホテル・旅館・民泊(簡易宿所)を営むオーナー向けに、宿泊業ならではの売上計上・経費・消費税のポイントを実務目線で整理します。
宿泊予約サイト(OTA)からの送客、現地での現金払い、朝食やレストランの売上、リネンやアメニティの仕入れ——。ホテル・宿泊業は「売上がどこから・いつ入ってくるか」が複雑で、経費の種類も多いのが特徴です。そのため、記帳のやり方をひとつ間違えると、売上の計上漏れや消費税の計算ミスにつながりやすい業種でもあります。
この記事では、宿泊業の経理でつまずきやすいOTA経由の売上計上、現金売上と売掛の分け方、そして食材を中心とした経費と消費税(軽減税率)の確認について、実務に沿ってまとめます。
1. ホテル・宿泊業の確定申告の全体像
個人で宿泊施設を営んでいる場合、1年間の利益(売上−経費)に対して所得税・住民税がかかり、確定申告が必要です。事業の規模が大きくなり、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の申告も必要になります。
宿泊業は、設備投資(建物・内装・備品)が大きく、稼働の波もあるため、減価償却や赤字の繰り越しをうまく使えるかどうかで税負担が大きく変わります。「青色申告にしているか」「日々の数字をきちんと残せているか」が、そのまま申告の精度に直結します。
2. 宿泊業で一番つまずく「売上計上」
宿泊業の経理で最初の関門になるのが、売上の計上です。飲食店のように「レジを締めれば1日の売上が確定する」とはいかず、入金経路が複数に分かれているのが理由です。
窓口(フロント)のシステムだけでは、プラットフォーム別の売上が見えない
フロントの予約管理システム(PMS)やレジでは、「どの予約サイト経由でいくら売れたか」というプラットフォーム別の内訳までは分からないことが多いのが実情です。画面上は宿泊実績や室料の合計が出ても、楽天トラベル・じゃらん・Booking.com・Airbnbなどサイトごとの売上や手数料が集計されていない——という施設は珍しくありません。
実務のポイント:そこで現実的な運用としては、レジ(POS)からはその場で受け取った「現金売上」だけを日々記帳し、OTA経由の売掛分は後日まとめて計上する、という二段構えにするのが分かりやすい方法です。
OTA(売掛)の売上は、翌月の請求書・精算書で計上する
OTA経由の予約は、宿泊代金がいったん予約サイト側に入り、手数料を差し引いた金額が翌月以降にまとめて施設へ振り込まれる形が一般的です。そのため売上が確定するタイミングと入金のタイミングがズレます。
そこで実務では、翌月に届く各プラットフォームの請求書(精算書・支払明細)を見て、サイトごとの売上と手数料をまとめて売掛分として計上します。流れを整理すると次のとおりです。
- 現地で受け取った現金売上は、その都度レジから記帳(日次)
- OTA経由の売上は、翌月の各サイトの請求書・精算書を見て、まとめて売掛金(未収入金)として計上(月次)
- 後日、手数料が差し引かれて入金されたら、売掛金を消し込み、差し引かれた手数料は「支払手数料」として経費計上
注意:この運用で気をつけたいのが「二重計上」と「計上漏れ」です。現地でOTA予約分の追加料金だけを現金で受け取ったようなケースでは、現金分とサイト請求分が重複していないか・抜けていないかの突き合わせが必要です。月末時点で「まだ請求書が来ていない宿泊分」がある場合は、売上の期ズレにも注意します。
3. ホテル・宿泊業が経費にできるもの【具体例】
仕入れ・運営にかかる費用
- 朝食・レストラン・ラウンジで提供する食材・食品・飲料の仕入れ代
- アメニティ(歯ブラシ・シャンプー等)、客室の消耗品
- リネン・タオルのクリーニング代、リネンサプライのリース料
- 清掃用品・洗剤、ゴミ処理費用
人件費
- フロント・客室清掃・調理スタッフの給料、アルバイト・パート代
- 社会保険料の事業主負担分、まかない費
- 家族へ支払う給与(青色事業専従者給与として届出が必要)
施設の運営費
- 建物の家賃・地代、固定資産税、火災保険料
- 水道光熱費(電気・ガス・水道)——客室数が多いほど大きな割合に
- 客室の設備・備品(ベッド・家具・空調・テレビ等)
- 建物・内装の減価償却費
集客・その他
- OTAへの送客手数料・予約サイトの掲載料、決済代行手数料
- 自社サイト・SNS広告・写真撮影の費用
- 予約管理システム(PMS)・チャネルマネージャーの利用料
- 借入金の利息、税理士報酬
ポイント:期末に残った食材・アメニティなどの在庫(棚卸資産)は、その年の経費から除く必要があります。建物・大型設備は一度に経費にできず、減価償却で複数年に分けて計上します。
4. 経費の「消費税の確認」が大変な理由
宿泊業の経費は食品・食材の仕入れが多いのが大きな特徴です。ここで問題になるのが消費税の税率区分です。
食材は軽減税率8%、それ以外は10%が混在する
- 飲食料品(食材・食品・酒類以外の飲料)の仕入れ:軽減税率 8%
- 酒類、アメニティ・消耗品・備品・水道光熱費・各種手数料など:標準税率 10%
つまり、同じ「仕入れ」でも1枚の領収書・レシートの中に8%と10%が混在することが日常的に起こります。スーパーや業務用食品店でまとめ買いをすると、食材(8%)とラップ・洗剤・酒類(10%)が1枚のレシートに並ぶ——というのは宿泊業では珍しくありません。
実務の悩みどころ:消費税を正しく計算するには、この8%と10%を1件ずつ確認して分けて記帳する必要があります。ところが件数が多いうえ、後からまとめて確認しようとすると、レシートの印字が薄れていたり、何の品目か思い出せなかったりして、非常に手間がかかります。「確定申告の直前に半年分のレシートを前に途方に暮れる」という事態になりがちなのが、この業種の経費まわりの実情です。
対策は「ためずに、その都度分ける」こと
- レシートは受け取った時点で税率区分を確認し、可能なら8%/10%の区分をメモしておく
- 会計ソフトにこまめに(できれば毎週・月次で)入力し、半年分をためない
- インボイス(適格請求書)として必要な記載があるレシート・請求書をきちんと保存する
「日々の小さな手間」を惜しまないことが、結果的に申告期の負担と計算ミスを大きく減らします。記帳代行を使えば、この区分作業そのものを当事務所に任せることもできます。
5. 宿泊業ならではの消費税の注意点
インボイス制度と負担軽減措置
インボイス登録をした個人事業主には、消費税の負担を抑える経過措置があります。
- 2割特例(売上にかかる消費税の2割を納税):個人事業主は2026年分の申告(2027年3月)まで適用できます。
- 簡易課税制度:宿泊業は原則「第5種事業(サービス業、みなし仕入率50%)」に区分されます。施設内のレストランなど飲食の提供部分は区分が異なる場合があります。
食材など仕入れが多い施設は、本則課税(実額で仕入税額控除)が有利なこともあれば、簡易課税や2割特例が有利なこともあります。どの方式が一番有利かは仕入れ構成と売上規模で変わるため、消費税は事前のシミュレーションが効果的です。
海外OTAへの手数料・宿泊税にも注意
- 海外のOTA(Booking.com・Expedia・Airbnb等)へ支払う手数料は、消費税の取り扱いが国内サイトと異なる場合があります。仕入税額控除の可否を含め、契約形態に応じた確認が必要です。
- 自治体によっては宿泊税(東京都など)を宿泊者から預かって納める義務があります。預り金であり売上ではない点に注意します。
6. 青色申告で節税する
- 青色申告特別控除(最大65万円):利益からさらに最大65万円を差し引ける(e-Tax+複式簿記が条件)。
- 赤字の繰り越し(最長3年):開業初期や大規模修繕・設備投資の年の損失を、黒字の年と相殺できる。
- 家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)。
- 少額減価償却資産の特例:30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満に引き上げ)の備品を一括で経費に(年間合計300万円まで)。客室備品の入れ替えが多い宿泊業と相性のよい特例です。
7. 2025年分(令和7年分)からの改正ポイント
2025年分の確定申告から、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられます(合計所得金額が一定以下の場合)。所得が低い層には期間限定の上乗せ措置もあり、条件によって基礎控除が最大95万円となるケースもあります。控除が増えるぶん、税負担が軽くなる可能性があります。
8. 宿泊業の経理をスムーズに進める3つのコツ
- 現金売上とOTA売掛を最初から分けて管理する:現金はレジから日次で、OTAは翌月の請求書で月次に——とルールを決めると、計上漏れ・二重計上を防げます。
- 食材レシートの8%/10%はその場で区分する:後回しにすると確認が一気に大変になります。会計ソフトへのこまめな入力が効きます。
- 消費税の方式は早めに税理士へ相談する:本則課税・簡易課税・2割特例で納税額が変わるため、決算前の相談が効果的です。
ホテル・宿泊業の税務は、専門の税理士にお任せください
W総合会計office(東京都杉並区高円寺) は、宿泊業をはじめ個人事業主・中小企業の税務を数多くサポートしています。
- OTA売上の集計・記帳代行・消費税申告のサポート
- 現金売上と売掛の管理ルールづくり、月次の数字の見える化
- 軽減税率・インボイス対応、課税方式のシミュレーション
- 高円寺駅・新高円寺駅から徒歩圏内/営業時間 9:00〜20:00(土日祝を除く)
- 香港人スタッフ在籍(広東語・英語対応可)
「OTAごとの売上集計が追いつかない」「食材レシートの消費税区分が大変」「記帳から申告までまとめて任せたい」——そんな方は、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成した一般的な解説です。税制は改正される場合があり、個別の状況により取り扱いが異なります。実際の申告にあたっては税理士にご相談ください。