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For Creators — インフルエンサーの経理

インフルエンサーの経理と確定申告
多様な収入と海外プラットフォーム入金

YouTube・Instagram・TikTok・ライブ配信で活動するインフルエンサーやクリエイターの収入は、広告収益・PR案件・投げ銭・アフィリエイト・物販など複数の経路に分かれ、AdSenseのように海外プラットフォームから入金されるものも少なくありません。そのため消費税の課税・非課税の区分やインボイス対応、私物と兼用しがちな経費の線引き、会社員との兼業など、一般的な事業者とは異なる論点が数多くあります。本コラムでは、インフルエンサー・クリエイターの経理と確定申告の要点を高円寺の税理士が実務目線で整理します。

代表税理士 渡邊巧
監修・執筆 — Author
代表税理士 渡邊 巧 / W総合会計office(高円寺の税理士)
確定申告・法人税・相続税・贈与税・記帳代行・経営相談に対応。プロフィール →

Overviewインフルエンサーの確定申告の全体像

個人で発信活動をしている場合、1年間の収入から必要経費を差し引いた利益(事業所得または雑所得)に対して所得税・住民税がかかり、確定申告が必要です。活動が事業として営まれていれば事業所得、副業的・一時的なものであれば雑所得となるのが基本で、所得が一定額を超えると個人事業税がかかる場合もあります。

インフルエンサーの経理には、(1) 入金経路が複数に分かれる、(2) AdSenseなど海外プラットフォームからの入金があり消費税の扱いが特殊、(3) 報酬から源泉徴収される収入と未収金が混在する、(4) 私物と兼用しがちで経費の線引きが難しい——という4つの特徴があります。これらを正しく押さえることが、適正な申告と節税の出発点です。

また、複式簿記で記帳し青色申告を選択すれば、青色申告特別控除や赤字の繰越しなど、税制上の有利な取扱いを受けられます。プラットフォームの管理画面や入金明細、領収書を日々きちんと残せているかが、そのまま申告の精度と納税額に直結します。

確定申告が必要となる所得ライン

専業の場合、所得(収入−経費)が基礎控除額を超えると所得税の確定申告が必要です。基礎控除は令和7年度改正で引き上げられ、令和7年・8年分(2025・2026年)は所得水準に応じて58万〜95万円です(従来は一律48万円)。

会社員などの給与所得者が副業として行う場合は、給与以外の所得が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です(住民税は別途申告が必要)。

Revenue Streams収入が複数の経路に分かれる

インフルエンサーの収入は、主に次のように入金元が分かれます。それぞれ入金サイクルや消費税の扱い、源泉徴収の有無が異なるため、収入を区分して管理することが出発点になります。

  • 広告収益(AdSense等) … YouTube・ブログなどの広告。Google等の海外プラットフォームから入金
  • 企業案件・PR・タイアップ … 国内企業からの広告出演・投稿の報酬
  • アフィリエイト … ASP(A8.net等)や各種アフィリエイト経由の成果報酬
  • 投げ銭・スパチャ・メンバーシップ … 配信プラットフォーム経由のファンからの支援
  • 物販・グッズ・デジタルコンテンツ … ECサイト・同人・有料note等の販売
  • 出演料・講演・原稿料 … メディア出演、登壇、執筆などの報酬

これらは消費税の課税・非課税(国外取引)源泉徴収の有無が経路ごとに異なります。下表のように、収入科目(または補助科目)を入金元ごとに分けておくと、後の集計や消費税判定、確定申告が格段に楽になります。

主な収入経路と消費税の区分
収入の種類主な入金元消費税
広告収益(AdSense)Google(海外法人)不課税
企業案件・PR・タイアップ国内企業課税
アフィリエイト(国内ASP)国内ASP課税
投げ銭・スパチャ・物販国内事業者経由課税
出演料・原稿料・講演料国内企業・媒体課税

※海外プラットフォーム経由の投げ銭・販売など、入金元が国外法人となるものは取り扱いが異なる場合があります。プラットフォームの規約や請求書(インボイス)の有無を確認し、判断に迷うものは区分を分けておくことをおすすめします。

Cross-border Income海外プラットフォーム入金と消費税

インフルエンサー特有の論点が、AdSense(Google)など海外プラットフォームからの広告収入です。Googleの広告サービスはシンガポール法人(Google Asia Pacific)との取引とされ、役務の提供先が国外であることから、消費税の「国外取引」=不課税(課税対象外)として扱うのが実務上の一般的な考え方です。

なぜAdSenseは「国外取引」なのか

インターネット広告の配信は、消費税法上の「電気通信利用役務の提供」に当たり、平成27年(2015年)の改正以降、役務の提供を受ける者(=広告主であるGoogle)の所在地で内外判定を行います。提供先が国外法人であるため、国内取引に該当せず不課税となります(かつての「輸出免税」とは扱いが異なります)。

この区分は、後述する消費税の課税事業者の判定(課税売上1,000万円)に直結します。AdSense収入は不課税のため、1,000万円の判定に含めません。したがって、収入の大半がAdSenseのYouTuberは、国内企業案件などの課税売上が1,000万円以下であれば、当面は消費税の免税事業者でいられるケースが多くなります。

一方で、国内企業からのPR案件・タイアップ・国内ASPのアフィリエイト・物販・出演料などは国内の課税取引です。これらの課税売上が基準期間(原則2年前)で1,000万円を超えると、消費税の課税事業者として申告・納税が必要になります。課税・不課税が混在するため、日頃から経路ごとに区分しておくことが欠かせません。なお、AdSense収入を得るための機材・通信費などの課税仕入れについては、仕入税額控除の対象とできる場合があり、個別の判断は当事務所にご確認ください。

Invoice Systemインボイス制度と2割特例・3割特例

企業案件を受けるインフルエンサーにとって、インボイス(適格請求書)登録の要否は実務上の大きな論点です。取引先(広告主・代理店)が仕入税額控除を受けるためにインボイスを求めることが多く、登録すると免税事業者であっても課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が生じます。

登録するかどうかは、取引先の構成(インボイスを求める企業案件が中心か、不課税のAdSenseが中心か)と、登録した場合の納税負担を比較して判断します。そこで重要になるのが、小規模事業者向けの負担軽減措置です。

インボイス登録に伴う負担軽減措置(個人事業者)
適用時期特例納付税額
〜令和8年9月分まで2割特例売上税額の2割
令和9年分・令和10年分3割特例売上税額の3割

2割特例から3割特例へ

2割特例は、免税事業者がインボイス登録で課税事業者になった場合に、納付税額を売上にかかる消費税の2割にできる措置で、令和8年9月30日を含む課税期間まで(個人は令和8年分の申告まで)適用できます。

その後、令和8年度税制改正で3割特例が創設され、個人事業者については令和9年分・令和10年分の申告で、納付税額を売上税額の3割とできます(法人は対象外)。いずれも事前の届出は不要で、申告時に有利な方を選べます。

これらの特例を使えば、課税事業者になっても当面の納税負担と事務負担を抑えられます。登録のタイミング・特例の選択・簡易課税との比較は納税額に大きく影響するため、取引先の状況と数年先の見通しを踏まえて判断することが大切です。

Withholding & Receivables源泉徴収・入金のタイムラグ・未収金

企業からの報酬には、源泉徴収されて入金されるものがあります。原稿料・デザイン料・講演料・出演料などは、支払者(企業)が所得税(原則10.21%)を差し引いて支払うため、振込額=収入金額ではありません

確定申告では、源泉徴収される前の総額を収入として計上し、差し引かれた源泉所得税は前払いした税金として精算します。源泉徴収は収入に対して一律に計算される仕組みのため、経費を差し引いた実際の税額より多く徴収されていることが多く、申告により還付(払い戻し)を受けられるケースが少なくありません。支払調書や入金明細をもとに、源泉徴収額を正確に把握しておくことが重要です。

また、PR案件やアフィリエイト、広告収益は、成果が確定した月と実際の入金月にズレがあります。AdSenseは原則として翌月に確定・入金、ASPは数か月後の入金も珍しくありません。決算日(12月31日)の時点で「確定済み・未入金」の売掛金(未収金)が必ず発生します。

未収金の計上を忘れない

その年に役務提供や販売が完了したものは、入金が翌年でもその年の収入として計上します(発生主義)。年末時点の確定報酬・未入金分を売掛金として計上しないと、その年の収入が過少(または期ずれ)になり、後の税務調査で指摘される原因になります。プラットフォームの管理画面の確定額と、通帳の入金額を毎月突き合わせて管理しましょう。

Deductible Expensesインフルエンサーが経費にできるもの

活動に必要な支出は必要経費として収入から差し引けます。インフルエンサーは機材・制作・場所にかかる費用の比重が大きく、計上漏れがないよう区分して管理することが節税につながります。

制作・撮影・機材

  • カメラ・マイク・照明・PC・スマートフォン・ジンバル等の撮影機材
  • 編集ソフト・サブスク、BGM・素材・フォントなどの利用料
  • 動画編集・サムネイル制作・デザインなどの外注費

場所・通信・運営

  • 撮影スタジオ・レンタルスペースの利用料、自宅兼用部分の家賃・光熱費(按分)
  • 通信費(回線・モバイル)、サーバー・ドメイン・各種ツールの利用料
  • 商品撮影・物販にかかる仕入れ、梱包・発送費

企画・取材・宣伝

  • 企画に直接必要な取材費・教材・書籍、検証用に購入した商品
  • 広告出稿・キャンペーン費用、グッズ制作費
  • マネジメント手数料・事務所への支払い、税理士報酬

人件費・その他

  • アシスタント・スタッフの給与、青色事業専従者給与(生計を一にする家族が編集・運営を手伝う場合)
  • 損害保険、同業者との情報交換にかかる会議費など

機材のように取得価額が高額なものは、原則として耐用年数に応じて減価償却します。ただし青色申告者は、取得価額30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満)の機材・備品を年間300万円まで即時に経費化できる特例(少額減価償却資産の特例)を使えます。

Expense Boundary経費の線引きと家事按分・現物支給

インフルエンサーの確定申告で最も論点になりやすいのが経費の範囲です。経費にできるかどうかは、その収入を得るために直接必要だったか、業務遂行上必要といえるかが基本です。私生活と地続きの支出が多いため、線引きと根拠の保存が欠かせません。

私物兼用は「按分」する

撮影機材が業務専用なら全額経費にできますが、プライベートと兼用するスマホ・PC・通信費や、自宅の一部を撮影・編集に使う場合の家賃・光熱費は、業務に使う割合で家事按分します。家賃なら撮影・作業スペースの面積比、通信費なら使用時間の割合など、合理的な基準で按分し、按分根拠を残すことが大切です。自宅全体の家賃を全額経費にすることはできません。

衣装・コスメ・美容

衣装・コスメは、撮影でのみ使用することが説明できれば経費になり得ますが、日常でも着用できる私服や、私的に使う化粧品は否認されやすい項目です。撮影で使った衣装は使用回や投稿との対応を記録しておくと、業務関連性を説明しやすくなります。

旅費・飲食

旅行・グルメ系の企画でも、すべてが自動的に経費になるわけではありません。撮影・取材の目的や成果物(投稿・動画)との結びつきを客観的に説明できる範囲に限られます。家族同伴の私的な部分は除く、撮影に使った回・カットを残すなど、業務との関連を裏づける記録が判断の分かれ目になります。

現物支給(ギフティング)にも課税される

PRのために企業から商品やサービスを無償提供された場合、その商品の価額(経済的利益)が収入として課税対象になることがあります。「お金をもらっていないから関係ない」と考えがちですが、受け取った商品も収入になり得る点に注意が必要です。提供を受けた商品・条件は記録しておきましょう。

SNSやプラットフォームには活動の記録が残り、無申告や過大な経費計上は税務調査で把握されやすい分野です。グレーな支出は「業務にどう必要だったか」を一言メモで残しておくだけでも、後の説明力が大きく変わります。

Tax Savingインフルエンサーの節税・所得控除

収入の波が大きいインフルエンサーこそ、使える制度を取りこぼさず、利益が出た年に有効活用することが重要です。代表的な節税策を整理します。

  • 青色申告特別控除(最大65万円):複式簿記での記帳+e-Tax申告(または電子帳簿保存)で65万円を所得から控除。
  • 少額減価償却資産の特例:取得価額30万円未満(2026年4月1日以後の取得分は40万円未満)の機材・備品を、年間300万円まで即時に経費化(青色申告の中小事業者等)。
  • 小規模企業共済:掛金(月最大7万円)が全額所得控除。引退・廃業時の退職金代わりになります。
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済):掛金(月最大20万円・累計800万円)を必要経費に算入可能。収入が不安定な年の備えにも。
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):掛金が全額所得控除。老後資金を作りながら節税。
  • 青色事業専従者給与:家族が編集・運営・経理に従事する場合、相当額を経費にできます。

収入の変動が大きい場合は、赤字を翌年以降3年間繰り越せる青色申告のメリットも大きくなります。所得控除(小規模企業共済・iDeCo等)と必要経費を組み合わせ、全体として最も有利になる形を毎年シミュレーションすることが大切です。

Side Business会社員との兼業・副業の確定申告

会社員をしながら発信活動で収入を得ている場合、本業の給与とは別に、副業の所得を申告する必要が生じます。判断の起点になるのが「20万円ルール」です。

  • 所得税:給与以外の所得(副業の収入−経費)が年20万円を超えると、確定申告が必要です。
  • 住民税:20万円以下で所得税の申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です(20万円ルールは所得税のみの取扱い)。

住民税の納付方法と「副業バレ」

確定申告書で住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」を選ぶと、副業分の住民税が会社の給与天引き(特別徴収)に合算されにくくなります。ただし自治体によって対応が異なり、副業がアルバイト等の給与所得の場合は普通徴収を選べないことが多い点に注意が必要です。

なお、副業の所得が事業所得か雑所得かは、活動の規模・継続性や帳簿の保存状況で判断されます。帳簿書類の保存があり、社会通念上事業といえる程度に営まれていれば事業所得として青色申告のメリットを受けやすくなりますが、規模が小さい段階では雑所得とされることもあります。就業規則上の副業可否もあわせて確認し、収入が育ってきたタイミングで体制を整えるのがおすすめです。

Incorporation法人化を検討するタイミング

収入が安定して大きくなってくると、法人化が選択肢になります。一般に、課税所得が900万円前後を超えると個人の所得税率(住民税と合わせ約43%)が法人実効税率を上回りやすく、所得800万円超・売上1,000万円超が法人化を検討する目安とされます。

法人化のメリットは、自分への役員報酬による所得分散と給与所得控除の活用、設立から最大2年間の消費税免除(資本金1,000万円未満などの要件)、欠損金の繰越期間が長いこと、退職金・社会的信用といった点です。一方で、社会保険の加入義務、設立・運営コスト、赤字でも生じる均等割、事務負担の増加、会社のお金を自由に引き出せないといったデメリットもあります。

「収入がいくらを超えたら法人化が有利か」は、所得水準・家族構成・収入の安定度・将来計画によって変わります。インフルエンサーは収入の変動が大きいため、単年ではなく複数年の見通しを立てたうえで判断するのが安全です。当事務所では、個人のまま続ける場合と法人化した場合の税負担を試算し、判断材料をご提供します。

FAQよくある質問

AdSense(広告収益)は消費税の課税売上に含めますか?

含めないのが一般的です。AdSenseはシンガポール法人との取引とされ、消費税の「国外取引(不課税)」に当たるため、課税売上1,000万円の判定には含めません。ただし、国内企業からのPR案件・物販・アフィリエイト等は課税売上に含めて判定します。

企業案件を受けています。インボイス登録は必要ですか?

取引先が仕入税額控除のためにインボイスを求めるかどうかで判断します。登録すると課税事業者になりますが、2割特例(〜令和8年9月分)・3割特例(令和9・10年分)で当面の納税負担を抑えられます。取引先の構成と数年先の見通しを踏まえて検討しましょう。

会社に副業を知られたくないのですが、申告は必要ですか?

副業の所得が年20万円を超えれば所得税の確定申告が必要で、20万円以下でも住民税の申告は必要です。申告書で住民税を「自分で納付(普通徴収)」にすると会社の天引きに合算されにくくなりますが、自治体や所得の種類により選べない場合があります。無申告は加算税・延滞税の対象になり得ます。

企業から商品をもらってPRしました。税金はかかりますか?

かかる場合があります。無償提供された商品やサービスの価額(経済的利益)が収入として課税対象になり得ます。金銭の授受がなくても収入になる点に注意し、提供を受けた内容を記録しておきましょう。

衣装代や旅費はどこまで経費にできますか?

撮影・取材に直接必要だったと客観的に説明できる範囲に限られます。私服にもなる衣装や私的な旅行部分は否認されやすいため、投稿・動画との対応や使用記録を残しておくことが大切です。私物兼用のものは業務割合で按分します。

Our Support当事務所のサポート

W総合会計officeでは、複数経路にわたる収入の区分と未収金・源泉徴収の管理、AdSense等の海外入金にかかる消費税(国外取引)の判定、インボイス登録と2割特例・3割特例・簡易課税の有利判定、私物兼用の経費按分や現物支給の取扱い、青色申告などの節税、会社員との兼業・副業の申告、法人化のシミュレーション、確定申告までを一貫してサポートします。記帳代行にも対応していますので、プラットフォームの管理画面データや通帳・領収書の状態からお気軽にご相談ください。

※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取扱いについては事実関係により異なります。AdSense等の消費税区分やインボイスの判断など、具体的なご判断は当事務所にご相談ください。税制・特例の要件は改正される場合があります(記載内容は2026年6月時点)。