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Tax-Saving — 出張手当の節税

出張手当(日当)で節税
出張旅費規程の作り方と非課税メリット

出張の多い会社なら、ぜひ整えておきたいのが出張旅費規程です。規程に基づいて支給する出張手当(日当)は、受け取る役員・従業員にとっては非課税、支払う会社にとっては損金になり、国内出張分は消費税の仕入税額控除の対象、さらに社会保険料もかからない——という、複数のメリットが重なる代表的な節税策です。本コラムでは、仕組みと効果、出張旅費規程の作り方、金額の相当性と注意点を高円寺の税理士が実務目線で整理します。

代表税理士 渡邊巧
監修・執筆 — Author
代表税理士 渡邊 巧 / W総合会計office(高円寺の税理士)
確定申告・法人税・相続税・贈与税・記帳代行・経営相談に対応。プロフィール →

Overview出張手当(日当)スキームとは

出張手当(日当)とは、出張した役員・従業員に対し、出張旅費規程で定めた金額を、交通費・宿泊費とは別に支給するものです。移動の疲れや出張先での細々とした出費に充てる手当という位置づけで、領収書がなくても定額で支給できます。

この日当は、規程に基づき社会通念上適正な範囲で支給される限り、受け取る個人には所得税がかからず(非課税)支払う会社では経費(損金)になります。会社のお金を、税負担をほとんど生じさせずに個人へ移せるため、役員報酬を増やすよりも有利な節税策として活用されています。

役員報酬を上げるのとどう違う?

役員報酬を増やすと、その分に所得税・住民税・社会保険料がかかります。一方、出張日当は受け取る側で非課税・社会保険料の対象外。同じ「会社から個人へお金を渡す」でも、出張日当のほうが手元に残る金額が大きくなります。

Four Benefits4つのメリットが重なる

出張日当が「節税の王道」と言われるのは、次の4つのメリットが同時に得られるためです。

出張手当(日当)の税務メリット
立場取扱い
受け取る個人(役員・従業員)非課税(所得税がかからない)
支払う会社損金(経費)になる
消費税国内出張分は課税仕入れ(仕入税額控除の対象)
社会保険実費弁償的な旅費・日当は対象外

「給与」だと、こうはならない

同じ金額を給与(役員報酬)で渡すと、個人は所得税・住民税の課税対象、会社・個人とも社会保険料の対象、消費税の控除も受けられません。出張日当は、これらをまとめて回避できる点に価値があります。海外出張分の日当は消費税の課税仕入れにはなりませんが、非課税・損金のメリットは同じです。

Why Tax-Freeなぜ非課税になるのか

出張日当が非課税になる根拠は、所得税法の規定にあります。勤務する場所を離れて職務のために旅行した場合に支給される金品で、「その旅行について通常必要であると認められるもの」は非課税とされています。

ポイントは「通常必要と認められる」範囲であることです。出張の実態に見合い、社会通念上妥当な金額であれば非課税ですが、出張の実態がない、あるいは金額が過大な場合は、非課税とは認められず給与として課税される可能性があります。規程の整備と適正な金額設定が欠かせません。

Travel Policy出張旅費規程が大前提

出張日当の非課税・損金算入は、出張旅費規程を整備し、それに従って運用してはじめて認められます。規程がないまま日当を払うと、損金が否認されたり給与課税されたりするリスクがあります。規程には次のような項目を定めます。

  • 対象者:役員・全従業員を対象にする(特定の人だけを優遇する内容は避ける)
  • 出張の定義:勤務地からの距離や移動時間、日帰り・宿泊の区分
  • 日当の金額:日帰り/宿泊、役職別の金額
  • 交通費・宿泊費:実費か定額か、上限額
  • 精算の方法:出張報告書・旅費精算書の様式と提出ルール

役職別の金額設定はOK、極端な格差はNG

社長・役員・一般社員で日当に差を設けること自体は問題ありません。実際、役職が上がるほど日当も高めに設定するのが通常です。ただし、社長だけ突出して高額にするなど、合理性を欠く格差は給与認定のリスクになります。役職に応じたバランスのとれた金額にしましょう。

Amount日当の金額と「相当性」

日当に法律で決まった上限額はありませんが、「通常必要と認められる」相当な金額であることが条件です。判断のものさしになるのは、(1) 同業・同規模の他社と比べて高すぎないか、(2) 役職に応じてバランスがとれているか、(3) 出張の実態に見合っているか、です。

金額の目安として、国内出張では役職に応じて日帰りで数千円程度、宿泊を伴う出張でそれより高めに設定する例が一般的です。世間相場から大きく外れた高額な日当は、税務調査で給与と認定されるリスクが高まります。迷う場合は、公的な統計(出張旅費に関する各種調査)や同業他社の水準を参考に、無理のない金額にしましょう。

「高く設定すれば得」ではない

日当を高くするほど会社から個人へ移せる金額は増えますが、相当性を超えると非課税のメリットを失い、過去にさかのぼって給与課税・追徴のリスクを負います。持続的に使える適正額に抑えるのが、結果的に最も得です。金額設定はご相談ください。

vs Reimbursement実費精算との違い

交通費や宿泊費の実費精算は、かかった費用を領収書に基づいて払い戻すもので、立替の精算にすぎず節税にはなりません。一方、日当は実際の出費の多寡を問わず定額で支給するもので、領収書も不要です。

たとえば日当を多めに使わずに済めば、その差額は受け取った個人の手元に非課税で残ります。交通費・宿泊費は実費精算(または規程の定額)で支給しつつ、それとは別に日当を支給するのが基本の形です。両者を混同せず、規程で明確に分けて定めましょう。

For Companies Only個人事業主は使えない——法人化のメリット

この出張日当スキームは法人だけが使えます。個人事業主は、自分自身に出張日当を支給しても経費にはなりません。事業のための出張でも、計上できるのは交通費・宿泊費などの実費に限られます。

法人化(法人成り)して出張旅費規程を整えれば、社長自身にも非課税の日当を支給できるようになります。出張が多い事業ほど効果は大きく、社宅スキームや役員報酬の所得分散とあわせて、法人化を後押しする要素になります。一人社長のマイクロ法人でも活用できます。

How to Start導入の手順と注意点

出張日当は、形式と運用を整えてはじめて認められます。次の流れで導入します。

  • 出張旅費規程を作成する:対象者・出張の定義・日当・交通費・宿泊費・精算方法を定めます。
  • 社内で正式に承認する:株主総会・取締役会などで決議し、規程の施行日を明確にします。
  • 出張のたびに記録を残す:出張報告書・旅費精算書に、日付・行先・目的・相手先などを記録します。
  • 規程どおりに支給・帳簿処理する:規程の金額で支給し、旅費交通費として損金処理、消費税区分も正しく入力します。

こんなケースは要注意

出張の実態がないのに日当だけ計上する、近距離の通常業務にまで日当を出す、規程と異なる金額を恣意的に支給する——といった運用は、給与認定や損金否認の原因になります。規程・出張記録・支給実績の3点セットを整えておくことが、調査でも説明できる備えになります。

FAQよくある質問

日当に領収書は必要ですか?

不要です。日当は実費の精算ではなく定額の手当なので、領収書なしで支給できます。ただし、出張の事実を示す出張報告書などの記録は残しておきましょう。

日当はいくらまで非課税ですか?

金額の上限は法律で定められていません。「通常必要と認められる」相当な範囲であることが条件です。同業他社の水準や役職とのバランスを踏まえ、世間相場から外れない金額にします。

社長一人の会社でも出張日当を出せますか?

出せます。出張旅費規程を整え、社長を含む役員・従業員を対象にすれば、一人社長のマイクロ法人でも非課税の日当を支給できます。

日当に社会保険料はかかりますか?

実費弁償的な出張旅費・日当は、原則として社会保険料(標準報酬)の対象になりません。給与とは区別して支給・処理することが大切です。

個人事業主は自分に日当を出せますか?

出せません。個人事業主が自分に支給する日当は経費になりません。経費にできるのは交通費・宿泊費などの実費だけです。日当を活用したい場合は法人化が選択肢です。

Our Support当事務所のサポート

W総合会計officeでは、出張旅費規程の作成、日当の金額設定(相当性の検討)、出張報告書・精算書の様式整備、損金・消費税・社会保険の処理、法人化を含めた総合的な節税シミュレーションまでを一貫してサポートします。「出張が多いので日当を整えたい」「規程の金額が適正か見てほしい」といったご相談から対応しています。お気軽にお問い合わせください。

※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取扱いは事実関係により異なります。日当の金額の相当性、出張の実態の判断、規程の整備など、具体的なご判断は当事務所にご相談ください。税制・特例の要件は改正される場合があります(記載内容は2026年6月時点)。