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Interest on Overseas Loans — 海外からの借入金の利息

海外からの借入金の利息は、全額が経費になるとは限らない
過少資本税制と過大支払利子税制

海外の親会社や、香港・中国などに住む株主・投資家から資金を借りている日本の会社では、支払った利息の全額が法人税の計算上の経費(損金)になるとは限りません。利息を使って日本の利益を国外へ移すことを防ぐため、法人税には過少資本税制と過大支払利子税制という2つの制限があります。前者は「借入と資本のバランス」、後者は「利息と所得のバランス」を見る制度です。税務調査で指摘されて初めて知ることも多いこの2つの制度を、計算例を使って解説します。

代表税理士 渡邊巧
監修・執筆 — Author
代表税理士 渡邊 巧 / W総合会計office(高円寺の税理士)
確定申告・法人税・相続税・贈与税・記帳代行・経営相談に対応。
公開:2026年9月 / 最終更新:2026年9月24日

Whyなぜ利息の損金算入が制限されるのか

会社が資金を集める方法は、出資(資本金)と借入の2つです。法人税では、株主に払う配当は損金になりませんが、貸主に払う利息は損金になります。

出資と借入で、法人税の扱いが違う
資金の入れ方会社が払うもの日本の法人税
出資(資本金)配当損金にならない
借入利息損金になる

そのため、海外の親会社が日本の子会社への出資を少なくして貸付けを多くすれば、日本の利益を利息として国外に移し、日本の法人税を減らせます。受け取る側の国の税率が低ければ、グループ全体の税負担も減ります。これを防ぐのが、ここで取り上げる2つの制度です。

過少資本税制は平成4年(1992年)4月1日以後に開始する事業年度から、過大支払利子税制は平成25年(2013年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。過大支払利子税制は令和元年度の税制改正で大きく見直され、令和2年4月1日以後に開始する事業年度からは、関連者だけでなく第三者への利息まで対象が広がり、基準も調整所得金額の50%から20%に引き下げられました。海外の貸主から借りている中小企業にも関係する制度になっています。

出典:租税特別措置法66条の5第1項・66条の5の2第1項/EY Japan「過大支払利子税制の見直し(令和元年度税制改正)」

Comparison2つの制度の違い

過少資本税制と過大支払利子税制
項目過少資本税制過大支払利子税制
条文租税特別措置法66条の5租税特別措置法66条の5の2
何を見るか借入と資本のバランス(借入 ÷ 資本持分)利息と所得のバランス(利息 ÷ 調整所得)
対象になる利息海外の支配株主等と、その関係の貸主への利息受け取る側で日本の課税所得に含まれない利息。株主かどうかは問わない
基準資本持分の3倍調整所得金額の20%
適用されない場合会社全体の借入が自己資本の3倍以下純支払利息が年2,000万円以下など
損金にならなかった利息繰り越せない7年間(一部10年間)繰り越せる

両方に当てはまる場合の調整は第6章で説明します。

Thin Capitalization過少資本税制——借入と資本のバランス

海外の支配株主等からの借入が、その株主の持つ資本の3倍を超える場合に、超えた借入に対応する利息を損金にしない制度です。

対象になる借入先

  • 国外支配株主等:非居住者・外国法人で、会社の株式の50%以上を直接・間接に持っている者。株式を持っていなくても、同じ者に50%以上持たれている兄弟会社の関係や、事業の方針を実質的に決められる関係があれば含まれます。実質的に決められる関係の例として、取引の相当部分をその者に依存している、事業に必要な資金の相当部分をその者からの借入や保証で調達している、役員の半数以上や代表者がその外国法人の役員・使用人の出身者である、といった事実が挙げられています。
  • 資金供与者等:国外支配株主等が第三者を通じて資金を出している場合(いわゆるバック・トゥ・バック融資)や、国外支配株主等が保証して第三者が貸している場合の、その第三者

受け取る側で日本の課税所得に含まれる利息は対象から除かれます。

2つの「3倍」を両方超えたときに適用

  • ① 国外支配株主等(と資金供与者等)からの借入の平均残高が、国外支配株主等の資本持分の3倍を超える
  • ② 会社全体の借入(利息の支払の基因となるものなど、資金の調達に係る負債)の平均残高が、自己資本の額の3倍を超える

資本持分は、自己資本の額に国外支配株主等の持株割合を掛けたものです。自己資本の額は、おおむね純資産(総資産 − 総負債)の平均で、これが資本金等の額を下回るときは資本金等の額を使います。②を満たさない(会社全体の借入が自己資本の3倍以下)なら、①を超えていても適用されません。

計算例:過少資本税制(仕組みを示すための単純化した計算)
項目金額
海外の親会社の持株割合100%
自己資本の額(=親会社の資本持分)1,000万円
親会社からの借入(平均残高・ほかに借入なし)1億円
借入の利息(年2%)200万円
①の基準:資本持分1,000万円 × 33,000万円
②の基準:自己資本1,000万円 × 33,000万円
3倍を超える借入:1億円 − 3,000万円7,000万円
損金不算入額:200万円 × 7,000万円 ÷ 1億円140万円

借入1億円は①②どちらの基準も超えるので、利息200万円のうち140万円が損金になりません。なお、この例の利息は年2,000万円以下なので過大支払利子税制は適用されず、過少資本税制がそのまま適用されます(第6章)。

同業他社の比率を使う方法

3倍の代わりに、同じ種類の事業を営み、事業規模などが似ている日本法人の「総負債 ÷ 純資産」の比率に照らして妥当な倍数を使うこともできます。借入が多くなりやすい業種では、検討の余地があります。

出典:租税特別措置法66条の5第1項・第3項・第5項/同法施行令39条の13第12項・第14項/国税庁 法人税申告書別表十七(一)の様式

Earnings Stripping過大支払利子税制——利息と所得のバランス

その期に払った利息が、会社の稼ぐ力(調整所得金額)に比べて多すぎる場合に、多すぎる部分を損金にしない制度です。

対象になる利息:株主でなくても対象

対象は、受け取る側で日本の法人税・所得税の課税所得に含まれない利息(対象支払利子等)です。海外の親会社だけでなく、海外の個人投資家、取引先、海外に住む親族など、株主ではない相手への利息も対象になります。

利息の払い先と、過大支払利子税制の対象
利息の払い先対象になるか
日本の銀行・信用金庫対象外(受け取る側で日本の課税所得に含まれる)
日本に住む個人(居住者)対象外(同上)
海外の親会社(外国法人)対象
海外に住む個人投資家・親族(非居住者)対象
海外の取引先・ファンド対象(日本の支店などを通じて日本で申告している所得に含まれる場合を除く)

基準:調整所得金額の20%

対象になる利息の合計から受取利息の合計を差し引いた額(対象純支払利子等の額)が、調整所得金額の20%を超えると、超えた部分が損金になりません。

調整所得金額とは

利息や減価償却費を差し引く前の「稼ぐ力」を表す数字です。おおまかには次のとおりです。

調整所得金額 = その期の所得金額 + 対象純支払利子等の額 + 減価償却費 + 貸倒損失 など

ここでの所得金額は、繰越欠損金の控除などを適用せず、寄附金は全額を損金に入れて計算します。マイナスになるときはゼロです。

適用されない場合

  • その期の対象純支払利子等の額が2,000万円以下のとき
  • 50%超の資本関係がある日本の会社グループ全体で、純支払利子等の合計が調整所得金額の合計の20%以下のとき

2,000万円は「そこまでは差し引いてよい」という控除額ではなく、判定のラインです。2,000万円を1円でも超えると、利息の全体が20%の基準で判定されます。

計算例の前提:海外の個人投資家(株主ではない)から12億円を年2%で借り入れている会社。受取利息はないものとします。

計算例:過大支払利子税制(1年目)
項目金額
支払利息(対象純支払利子等の額)2,400万円
所得金額(利息・減価償却費を差し引いた後)500万円
減価償却費1,600万円
調整所得金額:500万円 + 2,400万円 + 1,600万円4,500万円
損金算入の上限:4,500万円 × 20%900万円
損金不算入額:2,400万円 − 900万円1,500万円
損金不算入後の所得金額:500万円 + 1,500万円2,000万円

利息2,400万円のうち900万円しか損金にならず、所得は500万円から2,000万円に増えます。損金にならなかった1,500万円は、次の章のとおり翌期以降に繰り越せます。

出典:租税特別措置法66条の5の2第1項・第2項・第3項/同法施行令39条の13の2第1項

Carryforward損金にならなかった利息は7年繰り越せる

過大支払利子税制で損金にならなかった利息(超過利子額)は、翌期以降に繰り越せます。調整所得金額の20%が対象純支払利子等の額を上回り、枠に余りがある年に、余りの範囲で損金に算入します。

計算例:2年目(利益が大きく出た年)
項目金額
支払利息(対象純支払利子等の額)2,400万円
調整所得金額2億円
損金算入の上限:2億円 × 20%4,000万円
枠の余り:4,000万円 − 2,400万円1,600万円
1年目から繰り越した超過利子額1,500万円
2年目に損金算入できる額1,500万円(全額)

1年目に損金にならなかった1,500万円を、2年目に全額取り戻せました。

使うための条件

  • 超過利子額が生じた期以後の各期の確定申告書を提出していること
  • 使う期の確定申告書に、超過利子額と損金算入額の明細(別表十七(二の三))を添付すること

明細を添付しないと損金算入は認められず、添付した明細に書いた超過利子額が上限になります。

期限を過ぎると使えなくなる

繰り越せるのは、その期の開始の日前7年以内に開始した事業年度に生じた超過利子額です。ただし、令和4年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始した事業年度に生じた超過利子額は、繰越期間が10年に延長されています。

利益の少ない年が続くと、繰り越した超過利子額を使い切れないまま期限が来ます。一方で、繰越分の損金算入を定めた条文には、2,000万円以下で適用除外になった年を除く定めがありません。利息が少なく適用除外になった年でも、調整所得金額の20%に余りがあれば繰越分を使えます。

出典:租税特別措置法66条の5の3第1項・第4項・第5項/財務省「過大支払利子税制の概要」

Interaction両方に当てはまるとき

両方の制度で損金不算入額が出る場合は、原則として金額の大きいほうだけを適用します。条文では、過少資本税制の損金不算入額が過大支払利子税制の損金不算入額を下回る場合は、過少資本税制を適用しないと定めています。

ただし、過大支払利子税制が2,000万円以下などで適用除外になる年は、この調整は行われず、過少資本税制がそのまま適用されます。利息の総額が小さい会社ほど、過少資本税制のほうに注意が必要です。

出典:租税特別措置法66条の5第4項

Pitfalls実務でつまずきやすい5つの点

1. 「株主ではないから関係ない」とは限らない

過少資本税制は海外の支配株主等からの借入が対象なので、株主でない貸主からの借入は原則として対象外です。一方、過大支払利子税制は貸主が誰かを問いません。海外の知人や投資家から多額の資金を借りている会社は、株主でなくても過大支払利子税制の対象になります。

また、株式を持っていない貸主でも、事業に必要な資金の相当部分をその貸主からの借入で賄っていて、その貸主が事業の方針を実質的に決められる関係にあれば、過少資本税制の「国外支配株主等」に当たることがあります。

2. 赤字や利益の少ない年は、利息のほとんどが損金にならない

20%の基準は、その年の調整所得金額に連動します。為替差損などで大きな赤字になり調整所得金額がゼロになると、損金算入の上限もゼロになり、海外の貸主への利息が全額損金不算入になります。

赤字の年なので、その年の納税額はすぐには変わりません。しかし、その分だけ繰越欠損金が減り、代わりに超過利子額が残ります。超過利子額は、繰越欠損金と違って、調整所得金額の20%に余りがある年にしか使えません。

3. 2,000万円のラインを少し超えただけで、全体が判定の対象になる

年間の純支払利息が1,900万円なら適用されませんが、2,100万円なら2,100万円全体が20%の基準で判定されます。借入の追加や利率の見直し、外貨建ての借入なら為替の動きで、ラインを超えることがあります。

なお、決算期の変更などで事業年度が1年未満になっても、条文上、2,000万円を月割りする定めはありません。

4. 繰り越した超過利子額の使い忘れ

超過利子額は、使う期の申告書に別表十七(二の三)を添付して初めて損金になります。利益が大きく出た年に添付を忘れると、その年の枠の余りは使われずに終わります。過去に税務調査で過大支払利子税制の指摘を受けて修正申告をした会社は、そのときに生じた超過利子額の残高と期限を、毎期の申告で確認してください。

5. 利息を払うときの源泉徴収

日本で業務を行う会社が、海外の貸主(非居住者・外国法人)に業務に使う貸付金の利息を払うときは、原則として支払の際に所得税20%(復興特別所得税を含めて20.42%)を源泉徴収して納めます。香港・中国など日本と租税条約を結んでいる国・地域の貸主については、「租税条約に関する届出書」を出すことで税率が軽減される場合があります。過大支払利子税制や過少資本税制で損金にならない利息でも、源泉徴収は必要です。

出典:所得税法161条1項10号・213条1項1号/租税特別措置法66条の5の3第5項

Checklist自社が当てはまるかの確認手順

  • 海外の貸主(非居住者・外国法人)に利息を払っているか。払っていなければ、どちらの制度も原則として関係ありません。
  • その期の純支払利息(海外の貸主への利息 − 受取利息)が2,000万円を超えるか。超えるなら、調整所得金額の20%と比べます。
  • 貸主が株式の50%以上を持つ株主やその関係者か、または事業の方針を実質的に決められる立場か。そうなら、借入と資本持分の3倍基準を確認します。
  • 過去に損金にならなかった利息(超過利子額)が残っていないか。残っていれば、利益の出た年に別表十七(二の三)を添付して使います。期限も確認します。
  • 利息を払うときに源泉徴収をしているか。租税条約の届出を出しているかも確認します。

海外から資金を受け入れる前、あるいは出資と借入のどちらで資金を入れるかを決める前に検討しておくほうが、取れる対応の幅が広がります。

FAQよくある質問

日本の銀行から借りている借入金の利息も、この制度の対象になりますか?

原則として対象になりません。どちらの制度も、受け取る側で日本の課税所得に含まれる利息を対象から除いています。日本の銀行や日本に住む個人への利息はこれに当たります。ただし、海外の親会社の保証を受けて借りている場合、親会社に払う保証料は過少資本税制の計算に入ることがあります。

海外に住む知人から借りています。株主ではないのですが、関係ありますか?

過少資本税制は、事業の方針を実質的に決められる関係などがなければ、原則として関係ありません。過大支払利子税制は貸主が株主かどうかを問わないので対象になります。ただし、その期の純支払利息が2,000万円以下であれば適用されません。

損金にならなかった利息は、切り捨てになりますか?

過大支払利子税制で損金にならなかった利息は、超過利子額として7年間(令和4年4月1日から令和7年3月31日までに開始した事業年度の分は10年間)繰り越せ、調整所得金額の20%に余りがある年に損金にできます。過少資本税制で損金にならなかった利息は繰り越せません。

決算期を変えて事業年度が6か月になりました。2,000万円の基準は半分になりますか?

条文上、事業年度が1年未満の場合に2,000万円を月割りする定めはありません。6か月の事業年度でも、その期の純支払利息が2,000万円以下かどうかで判定します。

無利息で借りていれば、問題はありませんか?

どちらの制度も支払う利息を損金から外す制度なので、無利息の借入そのものから損金不算入額は生じません。ただし過少資本税制では、無利息の借入も資金の調達に係る負債として借入残高の判定に含まれます。同じ貸主から利息の付く借入もある場合は、損金不算入額が大きくなることがあります。

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W総合会計officeでは、海外の親会社や、香港・中国などに住む株主・投資家から資金を受け入れている日本法人の決算・申告に対応しています。別表十七の作成、超過利子額の残高と期限の管理、利息を払うときの源泉徴収と租税条約の届出、出資と借入のどちらで資金を入れるかの検討まで、決算の前にご相談ください。税務調査で利息の損金算入を指摘された場合の対応もお手伝いします。

※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取扱いは事実関係により異なります。計算例は仕組みを説明するために単純化しており、実際の計算では平均負債残高の算定方法、控除対象受取利子等、保証料の扱いなど、ここで省いた要素が入ります。制度は改正される場合があります(記載内容は2026年9月24日時点の法令によります)。

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