不動産を売ったときの税金(譲渡所得)をやさしく解説
杉並区高円寺の税理士・W総合会計office(代表税理士:渡邊巧)が、自宅や賃貸物件などの不動産を売却したときにかかる税金(譲渡所得税)の基本を解説します。
マイホームや相続した実家、賃貸アパートを売却したとき、利益が出ると「譲渡所得」として所得税・住民税がかかります。売却額そのものに課税されるわけではなく、「もうけ」の部分に対してかかるのがポイントです。
Contents
1. 譲渡所得(もうけ)の計算方法
不動産の譲渡所得は、次の式で計算します。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
- 取得費:その不動産を買ったときの代金・諸費用(建物は減価償却後の金額)。不明な場合は売却価格の5%を概算取得費とできます。
- 譲渡費用:仲介手数料、印紙代、測量費、建物の取り壊し費用など売却にかかった費用。
ポイント:購入時の契約書や領収書が残っていないと、取得費を低く見積もらざるを得ず、税額が大きくなることがあります。古い物件ほど資料の有無が重要です。
取得費が分からないときの「5%ルール」
購入時の契約書が見つからない場合は、売却価格の5%を取得費とすることが認められています。もともとは昭和27年12月31日以前から持っている土地建物のための規定ですが、昭和28年1月1日以後に取得したものについても同様に計算して差し支えないとされています(措置法通達31の4-1)。
ただし5%しか引けないと、売却価格の95%が丸ごと利益として課税されます。3,000万円で売れた物件なら2,850万円が譲渡所得となり、長期譲渡でも約579万円の税額です。購入時の契約書・領収書は、何よりも先に探してください。見つからなくても、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、購入時の登記費用の領収書、通帳の振込記録、当時のパンフレットなどから取得費を裏づけられることがあります。
取得費・譲渡費用に入れられるもの
| 区分 | 含められるもの |
|---|---|
| 取得費 | 購入代金(建物は減価償却後の金額)、購入時の仲介手数料、購入時の登録免許税・不動産取得税・印紙代、設備費・改良費、購入時に支払った立退料 |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料、売買契約書の印紙代、売るために行った測量費、建物の取り壊し費用、借家人に支払った立退料 |
| 入らないもの | 修繕費・固定資産税など維持管理のための費用、売却代金の取立て費用、引越し費用 |
2. 税率は「所有期間」で大きく変わる
不動産の譲渡所得の税率は、売った年の1月1日時点での所有期間で変わります。
- 長期譲渡(所有5年超):税率 20.315%(所得税15%+復興特別所得税+住民税5%)
- 短期譲渡(所有5年以下):税率 39.63%(所得税30%+復興特別所得税+住民税9%)
短期と長期で税率が約2倍違うため、売却のタイミングが手取りを大きく左右します。相続した不動産は、亡くなった方が取得した日を引き継いで所有期間を判定できる場合があります。
| 区分 | 所有期間 | 所得税+復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% | 20.315% |
注意したいのは、「売った日」ではなく「売った年の1月1日」で数える点です。2021年3月に買った物件を2026年6月に売る場合、実際の保有期間は5年3か月ですが、2026年1月1日の時点では4年10か月なので短期になります。売却を翌年にずらせば長期になり、税率は約半分です。年をまたぐだけで手取りが大きく変わるため、売却時期のご相談は早いほど選択肢が残ります。
3. マイホームを売ったときの特例
3,000万円の特別控除
自分が住んでいた家(マイホーム)を売ったときは、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。多くのケースで、これにより税金がかからなくなります。
軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売った場合は、3,000万円控除に加えて、さらに低い税率が適用される特例もあります。
これらの特例は確定申告をして初めて適用されます。「特例で税金がゼロになるから申告不要」ではない点に注意が必要です。
4. 賃貸物件を売るときの取得費と、売却後の負担
- 賃貸物件:建物は減価償却された後の金額が取得費になるため、計算が複雑です。
- 相続した不動産:被相続人の取得時期・取得費を引き継ぎます。使える特例は次章にまとめました。
- 売却益が大きいと翌年の国民健康保険料や住民税にも影響します。
5. 相続した不動産を売るときに使える2つの特例
① 空き家になった実家を売るとき——3,000万円の特別控除
亡くなった方が一人で住んでいた家を相続し、空き家のまま売った場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります(租税特別措置法第35条第3項)。相続人が3人以上のときは、令和6年1月1日以後の譲渡について1人あたり2,000万円が上限です。杉並区のように古い戸建てが多い地域では、該当する方が少なくありません。
主な要件は次のとおりです。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたもので、区分所有登記された建物でないこと
- 相続開始の直前に、被相続人が一人で住んでいたこと
- 相続の時から譲渡の時まで、事業の用・貸付けの用・居住の用に供されていないこと
- 譲渡の対価が1億円以下であること
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 譲渡の時に耐震基準に適合しているか、家屋を取り壊して売ること
- 特別関係者(配偶者・親族など)への売却でないこと
適用期限は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。見落とされやすいのが「貸付けの用に供されていないこと」で、空いているあいだ人に貸してしまうと使えなくなります。相続が起きた段階で売却の可能性があるなら、貸す前にご相談ください。
② 相続税を払った人が売るとき——取得費加算
相続税を納めた財産を一定期間内に売った場合、納めた相続税のうちその財産に対応する部分を取得費に加算できます(租税特別措置法第39条)。取得費が増えるぶん譲渡所得が減り、所得税・住民税が軽くなります。
期限は相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで。相続税の申告期限が10か月ですから、実質的には相続開始からおよそ3年10か月です。
加算できる金額は「その人の相続税額 ×(売った財産の相続税評価額 ÷ その人が取得した財産の合計額)」で計算し、譲渡益が上限になります。なお配偶者の税額軽減で相続税がゼロになった方は、加算できる相続税額がないため、この特例は使えません。
2つは併用できません
空き家の3,000万円特別控除は、取得費加算の適用を受けるものを除いて適用すると定められています(措置法第35条第3項)。つまりどちらか一方の選択です。納めた相続税の額と売却益の大きさで有利不利が変わるため、売る前に両方で試算しておくことをおすすめします。
6. 申告の期限
不動産を売却して利益が出た場合は、売った年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告が必要です。特例を使って税額がゼロになる場合も申告は必要です。
7. よくある質問
購入時の契約書が見つかりません。どうなりますか?
売却価格の5%を概算取得費とすることが認められています(措置法通達31の4-1)。ただし残りの95%が利益として課税されるため、税額はかなり大きくなります。住宅ローンの契約書や登記費用の領収書などから取得費を裏づけられることもあるので、あきらめる前にご相談ください。
所有期間はいつ時点で数えますか?
売った日ではなく、売った年の1月1日時点で数えます。5年超なら長期譲渡で20.315%、5年以下なら短期譲渡で39.63%です。年をまたぐだけで税率が倍近く変わります。
相続した実家を売ります。使える特例はありますか?
空き家の3,000万円特別控除と、取得費加算の2つがあります。ただし両方は使えず、どちらか一方の選択です。空き家の特例は貸してしまうと使えなくなるため、売る可能性があるなら貸す前にご相談ください。
特例で税金がゼロになるなら、申告は不要ですか?
必要です。マイホームの3,000万円特別控除も空き家の特例も、確定申告をして初めて適用されます。「ゼロだから申告しなくてよい」ではありません。
売却益が出ると、税金以外にも影響はありますか?
あります。翌年の国民健康保険料や住民税に影響することがあり、場合によっては医療費の窓口負担割合が変わることもあります。売る前の試算では、この点まで含めてご説明します。
不動産売却の税金は、高円寺の税理士へ
W総合会計office(東京都杉並区高円寺) は、不動産の譲渡所得の申告・試算をサポートしています。
- 譲渡所得・税額の試算(売る前のシミュレーション)
- マイホーム特例・取得費加算など各種特例の検討
- 賃貸物件・相続不動産の売却に伴う申告
- 相続・贈与を含めた資産全体のご相談
- 新高円寺駅から徒歩3分・高円寺駅から徒歩11分/営業時間 9:00〜20:00(土日祝を除く)
「売る前にいくら税金がかかるか知りたい」という段階でのご相談が、最も節税につながります。お気軽にお問い合わせください。
譲渡所得の確定申告は 確定申告の代行、相続した不動産の売却にともなう相続税のご相談は 相続税・贈与税申告 のページをご覧ください。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成した一般的な解説です。税制は改正される場合があり、個別の状況により取り扱いが異なります。実際の申告にあたっては税理士にご相談ください。