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非永住者のせどり・転売の税務|日本で仕入れ海外へ販売した利益はどうなる?

代表税理士 渡邊巧
監修・執筆 — Author
代表税理士 渡邊 巧 W総合会計office(高円寺の税理士)
確定申告・法人税・相続税・贈与税・記帳代行・経営相談に対応。
公開:2026年6月 / 最終更新:2026年9月2日

杉並区高円寺の税理士・W総合会計office(代表税理士:渡邊巧)が、香港など海外から来日した「非永住者」が日本でせどり・転売をしたときの税金を解説します。

「配偶者ビザなどで日本に住みながら、日本で人気の商品を仕入れて香港の人へ販売する」——こうしたせどり・転売(代購)のご相談が増えています。代金を香港ドルで香港の口座に受け取れば日本の税金はかからない、と考える方もいますが、実際はそう単純ではありません。ポイントは「どこで事業を行っているか」「どこで働いているか」です。

また、「これは香港の会社の売上です」というご説明をよくいただきますが、香港の「公司」には法人格のある有限公司と、日本でいう屋号にすぎない無限公司の2種類があり、どちらかによって日本での取扱いがまったく変わります。この記事では、その見分け方と維持費、そして日本で課税されるかどうかの判断軸を順に整理します。


1. まず「非永住者」かどうかを確認する

日本の所得税では、その人の区分によって課税される所得の範囲が変わります。香港から来日して間もない方の多くは非永住者に当たります。

ここが誤解されやすい点:「海外払いだから日本では課税されない」と思われがちですが、これは“国外源泉所得”に当たる場合の話です。日本国内で行った仕事・事業から生じた利益は、そもそも国外源泉所得ではないため、海外で受け取っても日本で全額課税されます。せどりの利益はまさにこのケースに当たります。


2. その「香港の会社」は、本当に法人ですか?

ご相談で最も多い入口が「これは香港の会社の売上です」という説明です。ところが香港では、個人事業主も「公司」を名乗ります。香港ではあらゆる事業者が税務局から商業登記証(BR)を取得する義務があるため、フリーランスでも屋号に「○○公司」と付けられるのです。広東語の「開公司(会社をつくる)」も両方を指すので、口頭の説明だけでは区別がつきません。

香港の事業体は、大きく有限公司(Limited)無限公司(獨資・合夥)に分かれます。

有限公司(Limited/有限公司)無限公司(獨資・合夥)
根拠法公司條例(Cap.622)商業登記條例(Cap.310)のみ
登記先公司註冊處+税務局税務局のみ
証憑公司註冊證明書(CI)+商業登記證(BR)商業登記證(BR)のみ
法人格ありなし
商号末尾が必ず "Limited"/「有限公司」制限なし
法定監査(核數)必須不要
利得税率8.25%/16.5%(2段階)7.5%/15%(2段階)

無限公司は、日本でいう「屋号」です。法人格がないため、その事業の利益は会社ではなく個人に直接帰属します。この場合、後述する外国子会社合算税制の議論はそもそも登場せず、最初から個人の所得として日本で申告することになります。

見分け方はシンプルです公司註冊證明書(CI)があるかどうか。CIがあれば有限公司(=日本の税法上も外国法人)、BRだけなら無限公司(=個人事業)です。公司註冊處の「網上查冊中心(ICRIS)」で商号を検索すれば、有限公司として存在しているかを外部から確認できます。

なお、有限公司であることが確認できた場合、日本の税法上は外国法人として扱われます。外国の事業体が法人に当たるかは最高裁平成27年7月17日判決の基準(設立準拠法上、法人格を付与する規定があるか等)で判定しますが、香港の公司條例は登記により法人となる旨を明記しているため、この点に実務上の争いはほとんどありません。


3. 有限公司を維持するには、毎年いくらかかるか

「香港に会社をつくる」を検討される方が見落としがちなのが、設立費用ではなく毎年の維持費です。日本の休眠会社と違い、取引がなくても法定監査(核數)が必要な点が最大のコスト要因になります。

項目年額の目安備考
商業登記費(BR)HK$2,350登記費HK$2,200+徴費HK$150。徴費の免除が2026年3月末で終了し、2026年4月1日以降はこの金額
周年申報表(NAR1)HK$105設立応当日から42日以内に提出。遅れるとHK$870〜3,480に跳ね上がる
公司秘書(Company Secretary)HK$2,000〜6,000設置が必須。香港居住者または香港法人でなければならない
登記上の事務所住所HK$1,000〜5,000香港所在であることが必須
重要控制人登記冊の指定代表者HK$1,000〜3,000香港に居住する取締役・従業員がいない場合に必要
法定監査(核數)HK$8,000〜30,000規模を問わず全社必須。香港の公認会計士(Practising CPA)しか行えない
記帳・利得税申告(BIR51)HK$5,000〜20,000取引量による

合計でおおむね年間 HK$20,000〜50,000(1香港ドル=19円前後として、日本円で40万〜100万円程度)というのが一つの目安です。代行会社の格安パッケージであればこれより低く抑えられる例もありますが、いずれにせよ売上がゼロでも毎年かかり続ける固定費である点は変わりません。

コストと課税は別の話です:維持費を実際に払っているからといって、それだけで「所得は香港会社のもの」と認められるわけではありません。逆に、費用を安く抑えたパッケージだから偽物だ、ということでもありません。日本で課税されるかどうかは、あくまで次の第4章以降で説明する「誰が、どこで事業を行っているか」で決まります。維持費は、その構造を維持する価値があるかを判断するための材料にすぎません。


4. ケース①:自分でせどりをして香港の人に売る

非永住者のAさんが、日本で商品を仕入れ、香港の人へ販売し、代金を香港ドルで香港口座に受け取った——というケースです。

仕入れ・梱包・発送の手配を日本国内で行っている以上、これは「日本で行う事業」です。したがって利益は事業所得となり、販売先が香港でも、香港ドルで香港口座に入金されても、日本で全額が課税されます(国外源泉所得ではないため、送金の有無は関係ありません)。

消費税にも注意:商品を海外へ輸出して販売する取引は輸出免税(消費税0%)になります。売上に消費税は乗りませんが、課税事業者を選べば仕入れに含まれる消費税の還付を受けられる場合があります。輸出を証明する書類の保存やインボイス登録の検討が必要です。

逆に、日本国内のお客様に販売している分は輸出ではなく国内取引ですので、消費税の免税は適用されません。「香港の会社の売上だから」として申告していないケースでは、所得税より先に消費税で大きな追徴が出ることがありますので、国内販売と海外販売は分けて集計しておく必要があります。


5. ケース②:香港の会社の売上にした場合

「売上は香港の会社のもので、Aさんは日本で商品を買って送るだけ」という形にすれば日本の税金を避けられるのでは——と考える方がいます。しかし実際には、次の3つの関門を順番に通過しなければなりません。

(1) 第一関門:そもそも所得は誰のものか(実質所得者課税)

日本の所得税法12条は、所得の名義がどこにあるかではなく、その収益を実際に享受している人に課税すると定めています。契約書や請求書の宛名が香港会社になっていても、それだけで所得が香港会社に移るわけではありません。

せどり・転売の業務を分解すると、多くのケースで次のようになります。

業務実際に行われている場所・主体
商品の仕入れ(店舗・ネット)日本国内・本人
仕入資金の出どころ本人の日本の口座
出品・価格設定・在庫管理日本国内・本人のPC
保管・梱包・発送日本の自宅または国内倉庫
顧客対応・クレーム処理日本国内・本人
売上代金の入金先本人名義の口座

この状態で「所得は香港会社に帰属する」と主張するのは困難です。事業を行っているのは日本にいる本人であり、香港会社は請求書の名義にすぎないと判断されれば、香港会社の存在にかかわらず、利益は本人の日本の所得として課税されます。

実務上の分かれ目:たとえば販売プラットフォームのアカウント名義・登録住所・振込先口座がすべて本人個人のものになっているケースは少なくありません。この場合、プラットフォーム側の記録がそのまま「事業主体は本人である」ことを示す資料になります。逆に、香港会社の名義で法人口座を開設し、そこで仕入資金の管理から売上入金までを完結させているのであれば、話は変わってきます。

(2) 第二関門:外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)

仮に香港会社が実体を伴っていて、所得の帰属が香港会社であると認められたとしても、それで終わりではありません。外国子会社合算税制が次に控えています。

Aさんを含む日本側の持分合計が50%超で、かつAさん本人の持分が10%以上であれば、その香港会社は外国関係会社に当たります。香港の税負担の水準(利得税率8.25%/16.5%)では、税負担割合による適用免除の基準を下回るのが通常ですので、合算を避けられるかどうかは経済活動基準を満たすかにかかってきます。

実体基準と管理支配基準の両方を満たさない会社は「ペーパー・カンパニー」に該当し、所得の一部ではなく会社の利益全額がAさん個人の雑所得として合算されます。少額であれば合算を免れるという例外(2,000万円以下等)は部分合算にしか適用されないため、せどり程度の利益規模でも全額が対象になります。

(3) 第三関門:恒久的施設(PE)課税

Aさんが日本国内で反復継続して仕入れ・発送を行っている場合、その活動が香港会社の恒久的施設(PE)と判断され、香港会社自体が日本で法人税を課されることがあります。

最も避けたいのは「両方で不利」になる形:香港は原則として香港で生じた所得にのみ課税する(地域来源原則)ため、実際の事業活動が日本で行われていれば、香港側では「香港源泉ではない」と整理されることがあります。一方で日本側からはPEありと見られる。どちらの国でも守ってもらえないという結果になりかねません。

また、2023年以降の香港のFSIE制度により、一定のグループ会社が香港で受け取る国外源泉の配当・利子・知的財産所得などは、経済実体要件を満たさないと香港でも課税されるようになりました。「オフショア所得は非課税」という古い理解は、現在では通用しません。


6. ケース③:香港の会社から給与をもらう場合

ケース②で、Aさんが香港会社から給与(人工)を香港ドルで香港口座に受け取った場合です。

給与は「どこで働いたか(勤務地)」で判定します。Aさんの仕事(仕入れ・手配)は日本国内で行われているため、この給与は国外源泉所得ではなく、香港払い・香港口座でも日本で全額課税されます。

「183日ルール」は使えません:短期滞在者の免税(年183日以下なら源泉地国で免税)は、日本に住んでいない人が短期間働いた場合の制度です。日本の居住者であるAさんが日本国内で働いている本件には当てはまりません。


7. まとめ:形を変えても「日本に実体がある」なら日本で課税

所得区分日本での課税
① 自分でせどり事業所得(規模により雑所得)海外販売・海外入金でも全額課税(確定申告が必要)
② 香港の無限公司の売上にする事業所得法人格がないため①と同じ。所得は個人に直接帰属する
③ 香港の有限公司の売上にする雑所得(合算課税)実質所得者課税で本人に帰属、または会社単位で全額合算。会社側もPE課税のリスク
④ 香港の会社から給与給与所得日本での勤務なので香港払いでも全額課税(外国税額控除で調整)

いずれの形でも、仕入れ・手配という実体が日本にあるかぎり、所得は日本に帰属し、日本での申告・納税が必要になります。香港に会社を置くこと自体が問題なのではなく、実体を伴わない名義だけの会社では課税を動かせない、ということです。

ご相談の前に、この2点だけ確認してみてください:①公司註冊證明書(CI)があるか——なければ無限公司(屋号)ですので、日本では個人の所得として整理することになります。②香港会社名義の銀行口座で売上を受け取っているか——売上金の入金先が本人名義の口座であれば、実質的には本人の事業と見られる可能性が高くなります。この2点で、取るべき方向がかなり絞り込めます。


8. 令和8年分(2026年分)の改正ポイント

令和8年度改正により、令和8年分(2026年分)から基礎控除の本則が62万円に引き上げられました(令和7年分は58万円、令和6年分までは48万円)。さらに令和8年・9年分は期間限定の上乗せがあり、合計所得489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円、655万円超2,350万円以下は62万円となります。あわせて給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円に引き上げられ、令和8年・9年分は給与収入220万円以下の場合にさらに5万円が上乗せされて74万円になります。扶養親族等の合計所得金額の要件も58万円から62万円(収入が給与だけなら136万円)に引き上げられました(令和8年12月1日施行・令和8年分以後の所得税に適用)。なお、上乗せは令和8年・9年分の措置です。令和10年分以後は区分が変わり、合計所得132万円以下の方に37万円が上乗せされて99万円となる予定です。

非永住者であっても、日本で行った事業の利益は日本で課税されるため、この基礎控除の改正はそのまま影響します。ただし非居住者になると基礎控除の適用は限定されますので、居住者・非永住者・非居住者のどの区分にあたるかを先に確定させてください。


9. よくある質問

香港の口座に香港ドルで入金されても、日本で課税されますか?

仕入れ・梱包・発送の手配を日本国内で行っているなら、それは「日本で行う事業」です。販売先が香港でも、香港ドルで香港口座に受け取っても、利益は日本で全額が課税されます。

「香港の会社の売上」にすれば日本の課税を避けられますか?

避けられません。所得税法12条の実質所得者課税により、名義ではなく実際にその収益を享受している人に課税されます。契約書や請求書の宛名を香港会社にしただけでは、所得は移りません。

香港の「公司」は会社という意味ではないのですか?

香港では個人事業主も「公司」を名乗ります。商業登記証(BR)はフリーランスでも取得するためです。有限公司(Limited)なら法人ですが、無限公司(獨資・合夥)には法人格がなく、日本では個人事業と同じ扱いになります。

香港の会社から給与をもらう形ならどうですか?

給与は「どこで働いたか」で判定します。日本国内で働いているなら、香港払い・香港口座でも日本で全額が課税されます。海外の会社からの給与は日本で源泉徴収されないため、ご自身で申告・納税する必要があります。

非永住者だと何が違うのですか?

非永住者は、国外源泉所得以外の所得は全額、国外源泉所得は日本で支払われた分と日本へ送金された分だけが課税対象になります。ただし日本で行った事業の利益は国外源泉所得ではないので、送金の有無に関係なく全額が課税されます。


非永住者の国際的なせどり・転売は、高円寺の税理士へ

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「日本で申告が必要か分からない」「香港の会社にした方がよいか相談したい」という段階から、お気軽にお問い合わせください。

せどり・転売の記帳と確定申告は 確定申告の代行、法人を使う場合の顧問・決算申告は 法人顧問・決算申告 のページにまとめています。


※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成した一般的な解説です。香港の登記費用・維持費は代行会社や会社の規模により変動し、税制も改正される場合があります。また、個別の状況(居住地・国籍・持株割合・租税条約など)により取り扱いが異なります。実際の申告にあたっては税理士にご相談ください。

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