Contents
Two Routes創業融資の2つの窓口
創業時の借入れは、大きく分けて次の2つです。
| 項目 | 日本政策金融公庫 | 自治体の制度融資 |
|---|---|---|
| 貸し手 | 日本公庫(国民生活事業) | 銀行・信用金庫など |
| 担保・保証 | 創業期は原則として無担保・無保証人 | 多くは信用保証協会の保証付き。保証を受ける対価として信用保証料がかかる |
| 条件 | 全国共通の融資制度 | 都道府県・区市町村ごとに異なる。利子や保証料の一部を自治体が補助することがある |
| 申込み | 日本公庫の支店(インターネット申込みも可) | 自治体の窓口や金融機関 |
制度融資は自治体ごとに中身が違うため、このコラムでは全国共通で条件を確かめやすい日本公庫を中心に説明します。制度融資を使う場合は、事業を行う自治体の窓口で最新の条件を確認してください。どちらを使う場合でも、創業計画書で「何にいくら使い、どう返すか」を説明することに変わりはありません。
出典:日本政策金融公庫「創業融資のご案内」/全国信用保証協会連合会「初めての融資と信用保証」
JFC Startup Loan日本公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」
日本公庫で創業時に使う中心の融資制度です。2025年3月に「新規開業資金」から現在の名称に変わりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご利用いただける方 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方。適正な事業計画を策定しており、その計画を遂行する能力が十分あると認められる方に限る |
| 資金のお使いみち | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据置期間5年以内) 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 利率 | 基準利率。女性の方、35歳未満または55歳以上の方などは特別利率(原則として土地にかかる資金を除く)。契約時の金利が最後まで適用される固定金利 |
| 担保・保証人 | 創業期の方は、原則として無担保・無保証人 |
ここでいう創業期は「新たに事業を始める方、または事業開始後、税務申告を2期終えていない方」です。創業期の方は、利率も原則として0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)引き下げられます。実際の利率は時期と条件で変わるので、日本公庫の「金利情報」で確かめてください。
7,200万円は上限で、誰でもこの額まで借りられるわけではありません。資金の使いみち、事業計画、返済の見込みから個別に判断され、希望どおりの額にならないこともあります。
据置期間とは
元金の返済を始めず、利息だけを払う期間です。開業直後、売上が立ち上がるまでの負担を軽くできます。ただし据置期間が終わると元金の返済が加わり、毎月の支払額が一段上がります。据置を長くすれば楽になるというものではないので、据置が明ける月の手元資金まで見て期間を決めます。
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」「創業融資のご案内」「Q&A(創業支援)」/日本公庫スタートアップ支援ポータル「『新規開業・スタートアップ支援資金』に関するお知らせ」(2025年3月3日)
Process申込みから入金までの流れ
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 相談 | 電話(事業資金相談ダイヤル)、オンライン、支店の窓口。予約すれば申込み前に相談できる |
| 2 申込み | インターネット申込み(24時間受付)。郵送でも申し込める |
| 3 面談 | 資金の使いみちや事業計画について話を聞かれる。事業計画に関連する資料や、資産・負債がわかる書類を用意する。店舗や事業所の予定地を訪ねてくることもある。オンライン面談も可 |
| 4 融資 | 融資が決まると契約手続き(電子契約)を経て、金融機関の口座に送金される |
| 5 返済 | 原則として毎月の返済。元金均等返済・元利均等返済・ステップ返済などから選ぶ |
申込みで用意する主な書類は次のとおりです。
- 創業計画書(日本公庫の様式、または自分で作った計画書)
- 設備資金を申し込む場合は、見積書
- 法人の場合は、履歴事項全部証明書または登記簿謄本
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートのいずれか)
- 許認可が必要な事業は、許認可証(飲食店の営業許可など)
- 担保を希望する場合は、不動産の登記事項証明書など
申込みから融資が決まるまでは、日本公庫の説明で平均3週間程度です。そのあとに契約手続きと送金があり、条件によってはさらに時間がかかります。物件の契約金、内装工事、設備の支払いがいつ来るかを先に並べ、そこから逆算して申し込みます。
出典:日本政策金融公庫「お手続きの流れ(創業予定の方)」「Q&A(創業支援)」
Order of Steps会社を作って借りるときの順番
法人で創業する場合は、次の3点で段取りの順番が決まります。
- 資本金は自分で用意する。日本公庫は、資本金の払込みに使う資金を融資の対象外としています。
- 借りるのは登記後の会社。法人で創業する場合、融資の対象は設立登記後の法人です。申込みには履歴事項全部証明書が要ります。
- 店舗・事務所の場所を先に決める。創業予定地が決まっていないと売上や経費の見込みが立たないため、出店地を決めてから申し込むよう案内されています。申込みの窓口は、法人なら登記上の本店所在地、個人なら創業予定地を担当する支店です。
まとめると、資本金の準備 → 物件の目途 → 設立登記 → 融資の申込みの順です。融資金の送金先になる会社名義の口座も、登記のあと早めに作っておきます。
なお、融資の申込みについて、個人と法人で大きな違いはなく、どちらが有利ということもないと日本公庫は説明しています。会社にするかどうかは融資ではなく、税金・社会保険・事業の見通しで決めるものです(マイクロ法人・法人化の判断)。会社を作ると、税務署・都道府県・市区町村への届出や社会保険の手続きも同じ時期に重なります(会社設立後にやること・期限一覧)。
出典:日本政策金融公庫「Q&A(創業支援)」「お手続きの流れ(創業予定の方)」
Business Plan創業計画書で見られること
日本公庫の創業計画書の様式は、次の10項目でできています。様式には「ご面談にかかる時間を短縮するために利用させていただきます」とあり、面談ではこの内容をもとに話を聞かれます。
| 項目 | 書くときのポイント |
|---|---|
| 1 創業の動機 | なぜこの事業を、なぜ今始めるのか。これまでの経験とのつながりが見えるように書く |
| 2 経営者の略歴等 | 勤務先名だけでなく、担当業務・役職・身につけた技能まで(様式の注記)。過去の事業経験、資格、許認可の状況も |
| 3 取扱商品・サービス | 内容と売上の割合、客単価、セールスポイント、販売ターゲットと集客方法、競合や市場の状況 |
| 4 従業員 | 常勤役員の人数(法人のみ)と、3か月以上続けて雇う予定の従業員の数 |
| 5 取引先・取引関係等 | 販売先・仕入先・外注先と、回収・支払の条件(何日締め・何日回収/支払) |
| 6 関連企業 | 本人・法人の代表者・配偶者が経営している会社があれば書く |
| 7 お借入の状況 | 法人の場合も代表者個人の借入を書く。住宅・教育・カードなど、事業以外の借入も含む |
| 8 必要な資金と調達方法 | 設備資金(見積先・金額)と運転資金、その調達方法(自己資金、親族などからの借入、日本公庫、他の金融機関)。両方の合計をそろえる |
| 9 事業の見通し(月平均) | 創業当初と、1年後または軌道に乗った後の売上高・売上原価・経費・利益。計算の根拠も書く |
| 10 自由記述欄 | アピールしたい点、事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイスなど |
税理士が特に見るのは「5」「8」「9」のつながり
計画書の数字は、項目どうしがつながっている必要があります。たとえば売上を月末締め・翌月末入金で受け取るなら、最初の入金までの2か月ほどは、仕入・家賃・人件費を手元の資金で払うことになります。これが「8」の運転資金の金額の根拠です。「9」の売上高は「客単価×客数×営業日数」のように分けて書き、「3」に書いた客単価や営業日数と数字をそろえます。
様式の代わりに、自分で作った計画書を出すこともできます。ただ、日本公庫の様式は面談で聞かれることの順番そのものなので、まず様式の項目を埋め、足りない部分を別紙で補う形が確実です。
出典:日本政策金融公庫「創業計画書」(書式ダウンロード)
Own Funds自己資金はいくら必要か
日本公庫は、自己資金を「重要な要素のひとつ」としつつ、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要だと説明しています。目安として、融資先の創業企業を対象にした日本公庫の調査(新規開業実態調査)では、創業資金の総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度とされています。
古い解説記事には「自己資金が一定以上ないと申し込めない」という要件が出てくることがあります。しかし現在の日本公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」と「創業融資のご案内」には、自己資金の要件は書かれていません。とはいえ、要件がないことと審査で見られないことは別なので、次の3点は押さえておきます。
- 自己資金は通帳で説明できる形にする。面談では資産・負債がわかる書類を求められます。少しずつ貯めてきたお金は、それ自体が計画を実行する力の裏付けになります。一時的に借りたお金を口座に入れて、自己資金に見せることはしません。
- 親族からのお金は、借入か贈与かを分ける。創業計画書の調達方法には、自己資金とは別に「親、兄弟、知人、友人等からの借入」の欄があり、内訳と返済方法を書きます。返さない前提で受け取るお金は贈与で、暦年課税では1年間に受け取った額が110万円を超えると贈与税の申告が必要です(生前贈与の活用法と注意点)。
- 個人の借入も正直に書く。創業計画書には、法人の場合も代表者個人の借入(住宅・教育・カードなど)を書く欄があります。
出典:日本政策金融公庫「Q&A(創業支援)」「お手続きの流れ(創業予定の方)」「創業計画書」
Repayment Plan税理士の目で見る「返せる計画」
創業計画書の「事業の見通し」は、売上から原価と経費を引いた利益で終わります。ところが実際に借入金を返すお金は、その利益からさらに税金を払ったあとに残るお金です。
元金の返済は経費にならない
借入金の利息は経費になりますが、元金の返済は経費になりません。借りたお金で買った設備は、減価償却を通じて何年かに分けて経費になります。このため、帳簿の上では黒字でも、元金の返済で預金は減っていきます。返済に回せるお金の目安は次のとおりです。
返済に回せるお金の目安
税金を払ったあとの利益 + 減価償却費(お金の出ていかない経費)
| 項目 | 金額(年) |
|---|---|
| 事業の見通しの「利益」(売上−原価−経費) | 200万円 |
| 税金(例として) | −40万円 |
| 減価償却費を足し戻す | +60万円 |
| 返済に回せるお金 | 220万円 |
| 元金の返済 | −120万円 |
| 手元に残るお金 | 100万円 |
支払利息は、すでに経費の中に入っています。会社であれば、手元に残る100万円が次の設備や、売上が落ちたときの備えになります。
個人事業と会社で、同じ数字の意味が変わる
日本公庫の創業計画書では、個人事業の場合、人件費に事業主本人の分を含めません(様式の注記)。つまり個人事業の「利益」には、事業主の生活費がまだ含まれています。上の例が個人事業なら、残る100万円から1年分の生活費を出すことになり、多くの場合は足りません。
会社の場合は、社長の役員報酬を人件費として経費に入れます。役員報酬は原則として事業年度の途中で金額を変えられないため(定期同額給与)、高くしすぎると会社に返済のお金が残らず、低くしすぎると社長個人の生活が回りません。計画書の人件費と返済の両方から逆算して決めるのが安全です。
据置明けと、消費税の納税が始まる時期まで見る
計画は1年分で終わらせず、少なくとも据置期間が明ける月と、消費税の納税が始まる時期まで見ておきます。資本金1,000万円未満で設立した会社は、原則として設立1期目・2期目は消費税の納税義務がありません。ただし、インボイス発行事業者の登録をすれば、その時点から納税が必要になります(インボイスの判断)。売上に含まれる消費税は預かっているお金なので、返済に回せるお金と混ぜないようにします。
FAQよくある質問
会社を設立する前に、創業融資を申し込めますか?
法人として借りる場合は、設立登記を済ませてから申し込みます。日本公庫は、法人で創業する場合の融資の対象を設立登記後の法人としており、申込みには履歴事項全部証明書が必要です。資本金の払込みに使うお金は融資の対象外なので、資本金は自分で用意します。個人事業として始める場合は、開業前でも申し込めます。
自己資金がなくても借りられますか?
現在の日本公庫の制度の案内には、自己資金の要件は書かれていません。ただし日本公庫は、自己資金を重要な要素のひとつとし、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要だと説明しています。融資先の調査では、創業資金の総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度です。
担保や保証人は必要ですか?
新たに事業を始める方、または事業開始後、税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で日本公庫の融資制度を利用できます。
申し込んでからお金が入るまで、どのくらいかかりますか?
日本公庫の説明では、申込みから融資が決まるまで平均3週間程度です。そのあとに契約手続きと送金があります。条件によってはさらに時間がかかるので、物件の契約や設備の支払いの時期から逆算して、早めに申し込みます。
借りたお金の返済は経費になりますか?
経費になるのは利息だけで、元金の返済は経費になりません。借入金で買った設備は、減価償却を通じて何年かに分けて経費になります。黒字でも返済で預金は減るので、返済額が、税金を払ったあとの利益と減価償却費の範囲に収まるように計画します。
税理士に頼まないと申し込めませんか?
ご自身で申し込めます。日本公庫は電話・オンライン・支店で相談を受け付けており、申込みはインターネットでできます。税理士に頼む意味があるのは、売上の根拠、返済と税金、会社設立後の役員報酬や消費税まで、計画書の数字をつなげて組み立てる部分です。
Our Support当事務所のサポート
W総合会計officeでは、創業計画書の数字の組み立て(売上の根拠、経費、返済と税金)、資金繰り表の作成、会社設立後の届出や役員報酬の決め方まで、まとめてご相談を承っています。最初のご相談から申告まで、税理士本人が担当します。やりとりはメール・LINE・テレビ会議で進められます。これから会社を作る方、独立して開業を考えている方は、いまの計画の段階でお聞かせください。
※本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取扱いは事実関係により異なります。融資制度の内容は日本政策金融公庫の公表資料によります。審査の結果、希望どおりに借りられない場合があります。利率や制度は変わる場合があります(記載内容は2026年9月24日時点)。
会社の設立から毎月の記帳・決算・申告までまとめてお任せいただく場合は 法人顧問・決算申告、個人事業として始める方は 確定申告の代行・記帳代行(丸投げOK) のページをご覧ください。